欅坂46・平手友梨奈「演技は嘘をつくこと?」悩みの果てに見えたヒロイン像
原作者とこだわって作り上げたシーンの数々 「万人受けなくてもいいやと思ったのは久しぶり」
――本作には、校舎の屋上から落ちる場面、列車の前に飛び出る場面など、観客にファンタジーを意識させるシーンがあります。あれは高校生の観客に対する、ある種のメッセージですよね? 響を現実世界だけに閉じ込めないための。 月川:その2つのシーンは、まさに原作者の柳本さんがこだわられていたところです。あのシーンがなかったらこの映画の印象は随分変わるでしょう。ここをどう描くかで、映画が台無しにも、豊かにもなる。最初はもっと現実的なことに置き換えて描こうと思っていたんですが、柳本さんは絶対に原作通りにやってほしいとおっしゃる。どうしようか考え、リアリティのラインを壊さないよう、ぎりぎりファンタジーとして描いたつもりです。大事な場面なので、周りを説得しながら、粘りに粘って(笑)。 ――この映画の主人公、響は少女。暴力には暴力、言葉には言葉で、ひるむことなく立ち向かいますが、少女なので返り討ちにあうのではないかと、大人の観客は少々不安になります。でも、前述のファンタジーの中で彼女が、「私は死なない」と言ってくれるので、その言葉を頼りにもう一度、本来のストーリーに戻っていける。そういう役割もあるのかなと思いました。 月川:柳本さんは、響が戦う相手は必ず彼女よりも大きい人にしてほしいとおっしゃっていました。平手さんも、原作の響より身長が高いことをけっこう気にしていたので、キャスティングする際は、涼太郎役(板垣瑞生)、隆也役(笠松将)も長身であることが条件となりました。自分と対等に戦うアヤカ・ウィルソンさんとの場面は、叩かれた分だけ叩き合うというふうに書いてもらっています。ホームでの柳楽優弥さんとの場面も、やり返されないように、後ろから不意打ちでいく。電車が入ってくるタイミングのホームで、あの距離に立たれたら恐怖で動けないですよね。もっとホラーみたいに、気づけば真後ろにいるみたいな描き方もあると思いますが、観客がハラハラしてくれたら、柳楽さんの恐怖も伝わるはずだと。見せ方はひとつ一つで工夫していきました。 ――この作品は月川監督の映画作りにおいて、ひとつの転換点となったのではないか? 大げさかもしれませんが、そう感じました。 月川:キラキラ映画と呼ばれているものでは、僕はサービスショットを撮ろうとします。観客が待ち構えていてくれるなら、欲しいものを投げ込みたい。でも『響 -HIBIKI-』では、それをしませんでした。作品としてどうあるべきか、ということを第一に考えたというか。万人に受けなくてもいいやと思ったのは、久しぶりです(笑)。学生時代に撮っていた作品に近いかもしれません。僕が大学院時代教わった、北野武さん、黒沢清さんに見せたいと思う映画が、やっと撮れたというか。そういう意味では、転換点になっていると思います。 (取材・文:関口裕子、撮影:小杉聡子) 『響 -HIBIKI-』2018年9月14日(金)公開