欅坂46・平手友梨奈「演技は嘘をつくこと?」悩みの果てに見えたヒロイン像
「高校生としての生活をちゃんと見せた方がいいのではないか」平手の提案で脚本を手直し
――本読みを始めてからも、脚本の直しは継続したんですね? 月川:はい。例えば、高校の文芸部員が皆で動物園に行く場面を入れたのも、平手さんの提案です。「高校生の話なのにずっと大人と戦っている。高校生としての生活をちゃんと見せた方がいいのではないか。それに、このままだと響が、芥川賞と直木賞を欲しいと思っているように見える。響はそんなこと気にしない人ですよね?」と。原作のどこを削ったことでそう見えるのかと洗い出した結果、動物園かなと。ここは撮影前に話して、台本を直したところです。どの作品でも撮影をしていてしっくりこないことはありますが、原作まで立ち返ることは滅多にありません。でも今回、彼女からもらったこの提案は、僕もすごく納得して採用することができました。 ――平手さんは、響として存在するというやり方を見つけたわけですが、演技はアンサンブルですので、相手との距離感で悩んだりすることはなかったのでしょうか? 月川:それは全くなかったと思います。例えば、北村有起哉さん演じる芥川賞作家の鬼島との最初のシーン。北村さんを見たとたん、「あ、鬼島がいる」ってすごく嬉しそうでした。原作を読んで掴んでいたキャラに出会ったという感じでした。 特に、響を見出す編集者、ふみを演じた北川景子さんとのコンビは素晴らしくて、二人はあっという間にいい関係を築いていました。北川さんは、何かにつけて現場にいる平手さんを守ってくれました。それが役としてなのか、俳優の先輩としてなのか、分からないくらい。そのケアは、もうひとりの高校生作家役を演じたアヤカ・ウィルソンさんにも向けられていて、アヤカさんがセリフが多くて芝居が難しかった日、少しナイーブになっているところに、すでにクランクアップしていた北川さんが訪ねて来て、何か話してくれたんです。戻ってきたアヤカさんは何か吹っ切れたようになっていた。北川さんが現場を支え、若い二人を本当の編集者のように守ってくれました。