1日の家事の時間を調べたら共働きなのに予想外の長時間…タイパや時短テクの効率性を考えない時間は無駄?
生産性を高めるため、効率的に使う「人工的な時間」
総務省が2021年に行った「社会生活基本調査」によると、6歳未満の子がいる夫婦共働き世帯の1日あたりの家事関連時間(家事、介護・看護、育児、買い物の合計時間)は、妻が7時間23分だったのに対し、夫は1時間54分でした。妻の家事時間は夫の約4倍に上り、家事分担の夫婦間格差が指摘されています。 我が家は、現在5歳の娘と2歳の息子を育てる共働き世帯です。家事や育児などにどれくらい時間を使っているのか、実際に夫婦の家事関連時間を算出してみました。 我が家の日常的な平日を振り返って家事関連時間を調べてみると、私が3時間で、夫は4時間でした。さらに、土日の時間数も加えて1週間で平均を計算すると、私は5時間分、夫が5時間36分となり、家事関連に費やす時間は夫婦合わせて1日平均10時間42分でした。 総務省の調査では、家事関連時間の夫婦合計が9時間22分だったので、これより1時間20分も長いことが分かりました。思っていたよりも、家事や育児などに時間を使っていたことに驚きました。ただ、不思議と心地良いとも感じています。 先日、東京・下北沢で開催されたゼブラ企業の祭典「ZEBRAHOOD 2024」で、トークセッションに登壇しました。ヒューマンルネッサンス研究所社長の立石郁雄さん、「ほっちのロッヂ」共同代表の藤岡聡子さん、総合地球環境学研究所所長の山極寿一さんと、「産まれる、死ぬ」という深いテーマについて意見を交わしました。その中で、人類学者である山極さんが、とても印象に残る話を語っていました。 「かつて人間には『自分の時間』というものはなくて、共に生きる時間しか持っていなかった。産業革命以後、工業生産が始まり、時間を“管理”するようになったのだ。つまり、人間は“人工的な時間”をつくり、生産性を高めるため、効率的に時間を使うという思想が生まれ、今は時間を効率性でとらえることが『自分の時間』を最大限に生かすことだと思うようになった。しかし、家族との食事や子どもとの遊びの時間というのは、生産性や効率性ではない基準で時間をとらえるもので、そういった時間を今後どうやって増やしていくのかを考える方が人間らしい」 ふと、子どもの頃に読んだミヒャエル・エンデの「モモ」を思い出し、ハッとしました。 1973年に出版された「モモ」は、「灰色の男たち」によって盗まれた時間を人間に取り返すために戦った少女の物語。人々に時間の節約を持ちかける「灰色の男たち」は、浮いた時間を奪い取る時間泥棒です。これまでのんびりと過ごしていた人々は、時間を無駄にしないように急にせかせかとし始めて、時間に追われ心の余裕を失ってしまうのです。