イーロン・マスク氏、トランプ新政権で「政府効率化省」トップに…CIA長官はラトクリフ氏
【ワシントン=淵上隆悠、阿部真司】米国のトランプ次期大統領は12日、保守系のFOXニュースで司会者を務めるピート・ヘグセス氏を国防長官に、実業家のイーロン・マスク氏を新設する「政府効率化省」のトップにそれぞれ起用すると発表した。トランプ氏は政権の骨格を自身に近い人物や信奉者で固める姿勢を鮮明にしている。
FOXによると、ヘグセス氏は元陸軍州兵で、アフガニスタンやイラクなどに駐留した経験がある。2014年にコメンテーターとしてFOXに加わり、現在は週末の番組でホスト役を務めている。トランプ氏は声明で「勇気と愛国心を持って『力による平和』を推進するだろう」とヘグセス氏に期待を示した。
FOXは、トランプ氏の番組出演を通じてヘグセス氏とトランプ氏は親交を深めたと報じた。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、トランプ氏が第1次政権で北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記と直接会談したことや、海外の駐留米軍の削減を訴えた点をヘグセス氏は評価してきた。
ヘグセス氏は、米メディアでも事前に国防長官候補として名前が挙がっておらず、同紙は今回の指名を「型破りだ」と伝えた。政府高官人事は上院の承認を得る必要がある。大統領選と同時に行われた上院選で共和党が多数派の奪還を確実にしたが、民主党議員からは「資格がない」といった声が上がっている。
一方、トランプ氏は「政府効率化省」を新設し、自身の選挙戦を支えたマスク氏と実業家のビベック・ラマスワミ氏の2人に運営を任せると表明した。ラマスワミ氏は今回の大統領選で共和党指名候補争いから撤退し、トランプ氏支持を明言していた。トランプ氏は声明で「2人は官僚主義を解体し、過剰な規制と無駄な支出を削減する」と強調した。
マスク氏は電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)で、X(旧ツイッター)のオーナーでもある。自身が経営する企業との利益相反や、偽情報の生成などに悪用されるAI(人工知能)に対する規制の停滞が懸念されている。
トランプ氏は12日、国境管理を担当する国土安全保障長官にサウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事を起用し、中央情報局(CIA)長官にジョン・ラトクリフ元国家情報長官を充てる人事も発表した。いずれも「親トランプ」の立場を示していた。