『ラブソングができるまで』最高のロマンティック・コメディにして最高のミュージカル映画
傷ついた者たちが出会い、恋に落ちる
かつての栄光もそろそろ効果を見せなくなってきたアレックスは、ある日、再起を賭けた大きなチャンスを得る。今ティーンの間で大人気のポップスター、コーラがなぜか「PoP」の大ファンで、ぜひ自分のために新曲をつくってほしいと依頼してきたのだ。ただし期限は48時間。あわてて曲作りを始めるが、雇った作詞家とは意見が合わず思うような歌詞が生まれてこない。そんなとき、アレックスは偶然植物の世話係として家にやってきた、ドリュー・バリモア演じるソフィー・フィッシャーと出会う。ピアノの音色にあわせ、ソフィーがふと口ずさんだ言葉を耳にしたアレックスは、彼女に並外れた作詞の才能があると知る。作詞なんてしたことがないし、文章を書く仕事なんて絶対に無理、と尻込みする彼女に頼み込み、ふたりは即席のチームを組み、作曲家と作詞家として最高のラブソングを仕上げることに。 ソフィーは、一見底抜けに明るく悩みのなさそうな女性だが、実は過去に大きな傷を受けた経験がある。大学時代に作家を目指していた彼女は、大学で文学を教えていた作家のスローン・ケイツと恋に落ちた。だが彼に婚約者がいることが判明し、修羅場を経験した後にふたりは破局。さらにスローンは、「作家としてのしあがるため、年上の作家を誘惑し、婚約者との仲を引き裂こうとした稀代の悪女」を主人公にした小説を書き、本は全米でベストセラーに。勝手に悪者にされた挙句、何のことわりもなく小説のモデルにされたソフィーは打ちのめされ、それ以来文学とは関係のないバイトばかりを重ねていた。彼女は、年上の男に自分の人生を奪われた女性なのだ。 それぞれ過去に手痛い挫折を味わったふたりが、偶然の出会いを果たし、一緒にひとつの曲をつくりあげる。彼がメロディを奏で、彼女が言葉を紡ぐ。足りないものを補いあう創作の過程が、恋の進展と同時並行で描かれる。この王道のストーリーが、正統派のロマンティック・コメディをつくりあげる。