「行ったり来たりは本当にやめてほしい」トヨタとハースの業務提携の背後でかわされた、モリゾウと小松代表の本音のぶつかり合い
10月11日、トヨタが富士スピードウェイがある静岡県で会見を行い、トヨタ・ガズー・レーシング(TGR)がハースF1チームと業務提携に合意したと発表した。 【衝撃画像】「周冠宇のマシンが吹っ飛んで裏返しでコースを滑走してる…」「炎の中にドライバーがいるじゃんか…」ドライバーが九死に一生を得た瞬間など大クラッシュ史を見る TGRとは、2017年に発足したトヨタのガズー・レーシング・カンパニーが展開しているモータースポーツ活動で、そこで得た知見を商品開発に生かしつつ収益にもつなげる好循環を目指している。 会見の冒頭で、ガズー・レーシングの高橋智也プレジデントは、あえてこう述べた。 「『トヨタF1復帰! 』と思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません」 それではなぜ、TGRはハースF1と業務提携したのか。
15年前の忸怩たる思い
「F1でのドライバー、エンジニア、メカニックの活躍は子どもたちにとって、夢や憧れ、目標となります。将来の自動車産業を担う子どもたちに、そのような希望を与えることは非常に重要なことだと考えています」 そのためTGRは、ハースF1とともに『ドライバー育成プログラム』を新設。世界の頂点を目指すドライバーを育てていくことにした。具体的には、TGRの育成ドライバーがハースF1のテスト走行に参加してF1での走行経験を積み、将来的にF1のレギュラーシートを獲得できることを期待している。 この会見には、トヨタの豊田章男会長も同席した。ただし、トヨタの会長としてではなく、「モリゾウ」として出席した。モリゾウとは豊田会長が「ひとりのクルマ好きのドライバー」になったときに使われる愛称だ。なぜ、会長ではなく、モリゾウとして出席したのか。 それは15年前にトヨタがF1から撤退したとき、トヨタの社長として撤退会見を行ったのが、当時社長を務めていた豊田だったからだ。その会見に同席していたトヨタF1チームの山科忠代表が会見の途中で涙する横で、会社を代表する豊田は取り乱すことを許されず、最後まで冷静さを失わなかった。それゆえ「F1をやめた人」というレッテルを貼られ、苦しんできた。 「レーシングドライバーたちと話していると感じることは、やっぱりみんな『世界一速いクルマに乗りたい』と思っているということです。ドライバーとはそういう生き物なんだと思います。ですが、私はF1をやめた人……。ドライバーたちは、私の前でその思いを素直に話すことができなかったんだと思います。私もF1撤退で日本の若者が一番速いクルマに乗る道筋を閉ざしてしまっていたことを、心のどこかでずっと悔やんでいたのだと思います」 昨年の9月、トヨタ育成出身でTGR WECチームのドライバーとして世界耐久選手権などを戦っている平川亮がリザーブドライバーとしてマクラーレンと契約を結ぶことが発表された。これはもちろん、トヨタが関わったことであり、ドライバーがF1を目指す道を再び切り開こうとする姿勢の表れだった。 ところが、豊田会長が平川と中嶋一貴、小林可夢偉の3人とともに鈴鹿サーキットを歩いていたとき、ファンから声がかかったのは「モリゾウさん」だった。 「私よりもハンドルに近い人間が、もっと主役にならなきゃいけない。そのためには主役になる場所を作ってあげなきゃいけない」 そう強く感じた豊田会長は、今年に入ってTGRのスタッフが交渉を進めていたハースF1の小松礼雄代表とトップ会談を実施することを決意した。
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