放置すれば失明の可能性も、自覚症状はほぼなし「緑内障」はどんな病気?緑内障のスペシャリスト井上賢治先生が解説
特に自覚症状はないのに、見えにくいと気づいたときにはかなり進行している恐ろしい目の病気の一つが、緑内障です。一方で、緑内障のスペシャリストである井上眼科病院院長の井上賢治さんは、「緑内障は早期に発見し、初期段階から適切な治療を行えば、決して怖い病気ではなく、かなりの確率で失明せずに生涯を過ごすことができる」といいます。 そもそも、緑内障とはどのような病気なのでしょうか。井上さんの新著『いちばん親切でくわしい 緑内障の教科書』から一部を抜粋・再構成してお届けします。
緑内障は、視神経がダメージを受けて視野が欠ける病気
文・井上賢治(井上眼科病院院長) 緑内障は、眼から脳に視覚の信号を送る視神経が障害され、視野が欠けていく病気で、あおそこひ(青底翳)とも呼ばれます。名前の「緑」は、昔ヨーロッパでこの病気の患者の目が緑色に見えたことが由来とされています。 しかし私たち日本人の目はほとんどが黒や焦げ茶色ですから、目が緑色になって緑内障に気づくということは、ほとんどありません。緑内障は“眼圧が高くなる病気”というイメージを持っている人も少なくないでしょう。でもそれは正確ではありません。確かに緑内障にとって眼圧は重要な問題なのですが、眼圧が正常値よりも高いのに緑内障にならない人もいれば、眼圧が正常値の範囲内なのに緑内障になる人もいます。 つまり、必ずしも“眼圧が高い=緑内障”ではないのです。眼圧については、正常値より、自分にとって最適な値を知り、それを保つことが大切です。
眼圧は眼球の内側からの圧力
では眼圧とは何でしょうか。眼圧とは、眼球の内側からの圧力のことで、眼球の硬さを生むものです。目を閉じて、まぶたの上から眼球にそっと触れてみてください。眼球には適度な硬さがあり、ペコッと凹んでしまうことはありませんよね。それは内側から眼圧がかかっているからです。
眼圧は、レンズの役割をする水晶体(すいしょうたい)より前の部分を満たしている房水(ぼうすい)によって保たれています。 房水は、水晶体を吊っているチン小帯(しょうたい)の根元にある毛もう様体(ようたい)から湧き出して、水晶体と虹彩(こうさい)の間を流れて前眼房(ぜんがんぼう)へ出た後、虹彩と角膜(かくまく)に挟まれた部分の隅角(ぐうかく)にある隅角線維柱帯(ぐうかくせんいちゅうたい)を抜け、シュレム管と呼ばれる静脈へと流れ出ていきます。 この房水の通り道や出口がふさがったり詰まったりして房水の流れが滞ってしまうと、眼圧が上がってしまいます。