「世界は待ち望んでくれているだろうか?」現地ロシアでフィギュア連盟会長が語った…ミラノ・コルティナ五輪参加が認められた“ロシア選手の現状”
日本勢の脅威にも? ロシアのメダル争いは「間違いない」
だがどの選手が選ばれることになろうとも、出場すれば全種目ロシアがメダル争いに関わってくることになるだろう。 「それは間違いないですね。特に女子。優勝したアデリア・ペトロシアンはフリーで3アクセルと4トウループを2回成功させました。彼女は来季ちょうどシニアに上がれる年齢に達します」とフラード氏。262.92で優勝したペトロシアンがミラノに出場することになれば、坂本をはじめとする日本勢にとって脅威になることは間違いない。 男子もトップグループはいずれもフリーで4回転を4回、あるいは3回組み入れている。ペアももちろん、アイスダンスも表彰台の可能性は十分ある。
「一切の取材に応じない」という条件の理由
筆者がもっとも気になっているのは、復帰の条件の一つにロシアの選手は大会開催中ミックスゾーン、会見も含めいっさい取材に応じない、とされていることだ。 これはIOCの判断で、パリオリンピックでも同様だったと聞く。政治的な内容の応答になることを避けるためなのか。それならば、「質問はこの大会のことに限定する」とし、違反したらその場でマイクを切れば良いと思う。 たとえメダルを獲得しても、コメントをすることも、聞くことも許されない。ロシアの選手が優勝したら、記者会見の真ん中は空席になる。まるで存在しない、日陰者という扱いだ。 選手側としても、復帰の喜びを伝えることも許されないというのはどうなのか。これは出場する側にも、見る側にも非礼だと感じるのは筆者だけだろうか。
ロシアの選手は待ち望まれているのか?
ロシア選手権で、フラード氏は連盟の暫定会長であるアントン・シハルリーゼ氏から「世界の人たちはロシアの選手を見たいと待ち望んでくれているのだろうか?」と逆に聞かれたという。「望んでいる人たちもたくさんいるし、そうでない人たちもいると思います」と彼女は答えた。 筆者自身も、複雑な思いがある。これ以上、選手たちに国家の責任をとらせるのは酷だという意見ももちろん理解できる。その一方で、ウクライナへの空爆がひどくなっているこのタイミングでロシアの復帰を許すのなら、この3年間の処分は一体何だったのだろうか、という虚しい気持ちもある。 平昌では「OAR」(ロシアからのオリンピックアスリート)、北京では「ROC」(ロシアオリンピック委員会)という名称で参加したロシアの選手だが、ミラノでは「中立な立場の個人選手」という意味の「AIN」と呼ばれる。変わったのは呼び名だけで、IOCの基本姿勢は結局変わっていないのではないか。 こうした背景の事情を取り除くと、もちろんレベルの高い戦いに対する期待もある。今後の展開を見守っていきたい。
(「フィギュアスケート、氷上の華」田村明子 = 文)
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