遅れておきながら急にやってきた秋。今の異常気象に農家として思うこと
昨今の異常気象は、多くの農家さんへの影響をもたらしています。東京と愛媛で二拠点生活をしている作家・作詞家の高橋久美子さんは、農家の一面もあります。そんな高橋さんが感じた今年の気候の影響についてつづってくれました。
夏っぽい秋の昼間、冬っぽい秋の朝
なんだか歌詞のようなタイトルですが、「秋がないよねー」なんて言葉もこの頃はよく聞かれますね。先週まで真夏のような気候だったのに、急に冷え込むようになって、みなさん、体調を崩していませんか? 畑に出ると、昼間は夏みたいに首元がジリジリする。かと思えば、夕方はつるべ落としのごとく日が短い。冬野菜を植える季節だけど、今までの常識よりも1か月遅く植えるくらいでちょうどいいように思う。たとえば、大根や白菜の種まきは四国では夏の終わりの9月中旬に行われていたが、最近の9月は、まだまだ真夏の気候なので、葉っぱを食べる虫(蝶々などの青虫)がうようよしていて、発芽した先から食べられてしまう。なので、虫よけのネットをかぶせなくてはいけないけれど、そうすると、今度は高温になりすぎて種が腐ってしまったりと、うまく発芽しないのよねえ。 お百姓ベテランの、母や近所の方たちも、この異常気象に、四苦八苦していた。 野菜づくりの名人おばあさんが、例年通りに大根の種をまいたところ、出てきた芽を全部虫に食べられたと母から聞いた。 「今までより1か月は遅くていいのかもね。野菜育てるのも難しくなったわあ」 今月頭、私が東京から帰ってきて、仲間とやっている畑を見に行くと…チガヤ倶楽部のメンバーが9月下旬に植えた大根も、おばあさんの畑と同じで虫たちにこてんぱんにやられてしまっている。 10月半ば、もう植えても遅いだろうなあと思いながらもう一度大根の種をまいてみた。そして、数日後見に行くと、ちゃんと芽が出ていた。 さあて、ここから上手く育つかしら。難しいのは、気温は夏並みに温かいけれど、日没は何千年経とうともほぼ変わっていないということだ。つまり、気温は夏なんだけど、日照時間は例年の秋ということなのよねえ。植物にとって最も大切な太陽が当たらないと育たない。それに、日が沈むと気温がぐんと下がって冬の香り。大根、わけぎ、白菜、小松菜、ホウレンソウ、高菜、水菜、いろいろと植えてみた。一斉に芽を出して、みんな元気にしている。このまま成長してねと祈る。 今はちょうど端境期で、食べる野菜がない。間引きをした菜っ葉を青虫のように食べて過ごす。