吉井理人監督が明かす、“選手の自主性”だけでは強いチームは作れない理由
主体性と自主性の大きな違いは、モチベーションに表れる
一方、アドバイスや指導を受けなくても、自分の強みや弱みを自分の頭で考え、強みを伸ばし、弱みを底上げする方法も自ら模索し、それを自分の責任のもとに行うことができる主体性のある選手は、私の知る限りほとんどいない。 主体性と自主性の大きな違いは、モチベーションに表れる。 自分で決定することと、人に決められてやることでは、モチベーションが異なる。集中の仕方も違えば、持続する期間も変わる。調子が悪くなった場合、すべてを自分で決めていると振り返りによって何が悪いのか認識しやすい。さまざまな意味で、主体的に自己決定をしていくことは、スポーツ選手にとって大きくプラスになる。 この主体性のある選手の代表格が、引退したイチロー選手や、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有選手、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手などだ。 高い技術を身につけようとしたとき、自分が納得し、自分でやろうと思って練習しなければ、なかなか身につかない。彼らが世界でも最高クラスの選手に上り詰めることができたのは、持って生まれた才能だけではなく、主体性を持って野球に取り組んでいたことが大きく作用している。 もちろん、プロに入ってきたばかりの若い選手たちは、いきなりすべてのことを自分で決断できない。そもそも、まだ何をしていいかさえわかっていない。指示を出してトレーニングさせないと、何もできずに終わってしまう。 ただ、指示を出されて取り組んでいくうち、やがて自分の頭で考えられる選手と、そうでない選手に分かれる。自分の頭で考えようとしない選手は、いつまで経っても指示待ちとなり、実戦では使えない選手になってしまう。その差はおそらく、時間が経てば経つほど開いていく。 これは、私自身も経験している。現役時代、私は指導者に言われたことを鵜呑みにするのが嫌だった。指示されたことでも、自分で考え、自分で決断して行動してきた。だからこそ、日本でもアメリカでもそれなりの成果を出せた。