吉井理人監督が明かす、“選手の自主性”だけでは強いチームは作れない理由
WBCで投手コーチとして侍ジャパンと共闘し、千葉ロッテマリーンズで監督として就任初年度で前年5位のチームをAクラスにまで引き上げた吉井理人監督。 筑波大学大学院でコーチングを学んだ経験を持つ、球界きっての知将が「自ら伸びる強い組織=機嫌のいいチーム」づくりの秘訣とは? 今回は吉井監督がもっとも大切にしている「選手に主体性を持たせること」の大切さについて、書籍『機嫌のいいチームをつくる』より紹介します。 ※本稿は『機嫌のいいチームをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
主体性と自主性には違いがある
私がこれまで務めてきたピッチングコーチやピッチングコーディネーターの仕事は、大まかに言えば投手部門のことだけを考えていればよかった。 だが、監督へ昇格することによって、チーム全体について考える必要がある。さらに球団本部長との関係、オーナーやスポンサーとの関係など、全方向に意識を向けなければならない。必然的に、仕事に臨むにあたってのマインドセットの大幅な変更が求められる。 とくに重要なのが、監督という仕事に取り組むにあたっての「基本方針」である。何を優先するか、何を重視するか、何を求めるか、何をやらないか―─。監督が覚悟をもって基本方針を決めることで、チームの色が決まる。私は、真っ先に決意したことがあった。 「選手に主体性を持たせ、自ら考え、自ら決断し、自ら行動できるようになってもらいたい。そのためにできることはすべてやる」 常々思っていたのは、主体性と自主性には違いがあることだ。それぞれの言葉の意味を見ると、次のように説明されている。 ・主体性─自分自身の意思や判断に基づいて行動を決定する様子 ・自主性─当然になすべきことを、他人から指図されたり、他人の力を借りたりせずに、自分から進んでやろうとする様子 このように、主体性と自主性は明確に意味が違う。主体性には自分の意思や判断が含まれているが、自主性には含まれていない。 学生野球や社会人野球などアマチュア野球を含め、日本の野球界には人に言われたことを率先してやれる選手は多い。アドバイスや指導を受けた際、納得していなくても、あるいは何も考えずに、言われたままやる。ただし、そこに「イヤイヤ感」はなく、積極的に取り組む。これが自主性である。