映画『チャーリー』は泣けるだけじゃない! わんこと孤独な男がサイドカーでヒマラヤを目指す、インド縦断ロードムービー
本物の雪を目指して、旅は続く
裕福とはいえないダルマにとって金銭的に楽ではない旅だが、一日中一緒に過ごして出会いや体験を重ねていくうちに、ふたりの絆はより深くなっていく。チャーリーだけでなく、ダルマにとっても初めての経験ばかりだ。南から北への移動に伴って移り変わっていく自然の様相とともに、街もそれぞれに個性的だ。いかにもインド的な街並みあり、ヨーロッパアルプスの麓にありそうな可愛い町もあり、ひなびた農村もある。人里離れた一軒家もある。人種も宗教もさまざまな中で、親身になってふたりを助けてくれる人たちが折々に現れる。 旅の経過を示すシークエンスでさらりと流れていくが、チャーリーを抱いてサイドカーに乗る人たちが次々に入れ替わっていくシーンがある。ヒッチハイクや道端で困っている人に声をかけて、ダルマが乗せたと想像できる。旅が進む中での偏屈だったダルマの変化や、人なつこいチャーリーが多くの人たちとの触れ合いを楽しんだことがわかる。チャーリーと一緒にサイドカーに乗った人たちには、「ちょっと特別」な記憶となって残り、彼らがこのひとときを思い出すたびに、チャーリーは彼らの中に生き続けるのだろう。さりげなくも、好きなシーンだ。
チャーリーがダルマにのこしてくれたもの
チャーリーはやんちゃで人なつこく、ダルマに一途な愛を向けて、最初から最後まで変わらない。片やダルマは、最初と最後ではまるで別人だ。それとも、過酷な経験で心を閉ざす前の本当の自分を取り戻したのかもしれない。ペットを飼っている人は、その彼らを犬や猫などというよりも「家族」であると感じるのではないだろうか。しかし、そんな家族の最期の時にできる限り寄り添っていたいと思っても、ダルマのように仕事も生活もなげうって望みを叶えることは難しい。「犬は人生を変える」のコピーの通り、チャーリーの愛に自分の全てで応えたダルマに訪れる新しい人生は、それこそがチャーリーののこしてくれた贈り物だろう。 チャーリーの名演と相まって泣ける映画である本作だが、単なる感動ものではなく明確で大切なメッセージも発信される。なにより、悲しい涙や可哀想な涙よりも、溢れてくるのは温かく心地よい涙だ。ぜひ劇場で、ふたりの旅を一緒に体験してほしい。その時はエンドロールもお見逃しなく。 またパンフレットは本文が絵本のように可愛く、本作にぴったりの装丁となっている。監督から日本の観客へ向けた特別なメッセージや場面写真もたっぷりと掲載されているので、鑑賞の記念を残したくなったら、手に取ってみてはいかがだろうか。 INFORMATION 『チャーリー』 監督・脚本:キランラージ・K 出演:チャーリー、ラクシット・シェッティ、サンギータ・シュリンゲーリ、ラージ・B・シェッティ、ダニシュ・サイト、ボビー・シンハー <2022年/インド/カンナダ語/カラー/シネスコ/164分/5.1ch> 公式サイト:https://777charlie-movie.com/ 公式X:https://x.com/777charlie_jp 配給:インターフィルム (C) 2022 Paramvah Studios All Rights Reserved. 2024年6月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
文=KURU KURA編集部