「和田誠に」詩作した谷川俊太郎さん 平野レミさんを力づけた言葉
13日に亡くなった詩人の谷川俊太郎さんは、イラストレーター和田誠さん(2019年死去)と多くの作品を手がけました。和田さんの妻で料理愛好家の平野レミさんに、仲の良かった2人のエピソードや、和田さん亡き後、谷川さんから勇気づけられた思い出をうかがいました。 【写真】亡くなる2週間前、谷川俊太郎さんは言った 「死ぬっていうのは…」 ◇ 谷川先生とは、和田さんがずいぶんとたくさんの絵本をつくりました。しょっちゅう「今日は谷川さんとごはんだから遅いよ」と出かけたり、音楽会で会うと「おお、どうもどうも」とうれしそうにしゃべっていたり。うちに見えた時は、私はお茶だけ出して引っ込んだので何を話しているのかはわからないのだけど、何しろ和田さんと谷川先生はとっても仲良しで、電話でも色んな話をしていました。 和田さんが亡くなった時、新聞に「和田誠に」という詩を寄せてくれたの。とっても良い詩だったから、新聞の切り抜きではない、紙にじかに書いていただいたものがほしくて、先生のおうちに直談判しに行ったんです。(平野さんが開発したフライパンの)レミパンを手土産にして。そうしたら、とっても喜ばれて、和田さんとの色んな思い出を話してくれました。詩もさらさらと書いてくださった。 私が帰る時には玄関まで来て「元気出してね」「よく寝るんだよ」と、私を力づける言葉をくださった。私の手をぎゅっと握ってくれたんだけど、不思議なことに和田さんがすぐ横にいるように感じたのよ。 その後、電話をする機会があって話していたら、先生から「もうひとつ、あのレミパンがほしい」と言ってくれて、私は「はい、わかりました!」って。あんな大先生がフライパンの話をしてるのがとてもかわいらしくって。 自宅には、先生の詩と、篠山紀信さんが撮ってくれた和田さんの写真、それと和田さんがデザインしたたばこの「ハイライト」を並べて飾っています。和田さんと仲良しの人がたくさん、天国に行っちゃったけど、向こうでも会って、楽しくおしゃべりしていてほしいな。本当に仲良しだったから。(聞き手・松沢奈々子)
朝日新聞社