イチローを丸裸にした恐るべき攻略法「卑怯だと言う人もいるかもしれないが…」
記事の最後では「卑怯だと言う人もいるかもしれないが、勝つためには、データは大切な道具となる。道具は、使う人間がいて初めて役に立つ。データがあってもそれを分析できて、選手に伝えられて、それをグラウンドで生かせるだけのレベルのチームは少ない。それがヤクルト、いや、野村監督だったのかな」と語った。 今に至るもアナリスト、それを活かす球団が肝に銘ずべき言葉だろう。 ● プロの12球団中10球団が アソボウズのシステムを導入 この1995年の日本シリーズを契機として、アソボウズの名前は、プロ野球界に知れ渡った。オフにはヤクルト、巨人、阪神、中日、オリックス、ロッテ、西武、近鉄の先乗りスコアラーやデータスタッフがアソボウズを訪れ、「スコアメーカー」などアソボウズのシステムの導入を決めた。 このとき、片山は1つの問題に直面した。 これまでアソボウズは自分たちが開発したシステムを自分で動かして選手や試合のデータを得ていた。分析結果の著作権は当然アソボウズが保有している。しかし、各球団がアソボウズのシステムを導入すると、球団のスタッフがシステム上で入力をしてデータを得るようになる。
データの分析方法や、評価などは球団独自のものだ。これらのデータは各球団の資産であり、極秘情報となる。他球団やマスコミなどに無断で情報が漏洩することは、あってはならない。 多くの球団の選手のデータを取り扱うアソボウズは「情報管理」にさらに神経を使うようになる。アソボウズが開発した「スコアメーカー」やフォームの解析システムは、ゴルフやサッカーなどの他分野のスポーツとも提携を始めた。こういう形で、2000年前後には、NPB12球団のうち10球団がアソボウズのシステムを導入するようになった。 ただ、10球団が一斉に「情報化」に向けて邁進したわけではない。球団オーナー、経営者の肝いりでシステム導入が決まったとしても、フロントや監督の中には「データ野球」に否定的だったり、不熱心な人もいる。そういう球団では「宝の持ち腐れ」になることも少なくなかった。 また、監督、首脳陣が交代すれば、これまで構築してきた情報システムが顧みられなくなることもしばしば起こった。そこで球団によっては、しばしば交代する監督、コーチではなく正社員である球団スタッフが、これを習得し、系統的に伝えることも行われた。 ※参考文献、片山宗臣『パソコンが野球を変える!』
広尾 晃