IoTとビジネスの可能性を考える ITビジネスアナリスト・大元隆志
第2期 IoTによるビジネス改革とビジネス創造
2011年、ドイツ科学技術アカデミーが開発、製造、流通プロセスをIoTにより全体最適化する「Industrie 4.0」という概念を発表し、2013年11月に「Industrie 4.0 German Standardization Roadmap」を発表しました。 2012年11月には、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が航空機や電車、ガスタービンなどの産業機器の運行や部品の状態などをインターネットで総合管理する「Industrial Internet」という概念を発表し、2014年3月に「Industrial Internet Consortium」が設立されました。 インターネットが当たり前の物となり、ビジネスに欠かせない存在となった現在、特にGEの「Industrial Internet Consortium」が世間の注目を集め、現在の「IoT」ブームへと広がったと見ています。 この時期から「IoT」という言葉に触れた人には、政財界、民間企業、経営者が多く、技術的な視点よりもビジネス視点で「IoT」が語られるようになりました。また、通信技術に関するビジネスが中心だった第1期と異なり、第2期では、大量の機器から発生するデータをいかにして経営に活かすかが主軸となりました。ケヴィン・アシュトン氏のIoTの概念も包括されるようになりました。 とはいえ、GEの「Industrial Internet Consortium」はまだ出来て1年も経過していませんから、これだけを見ていれば「IoTは単なるバズワード(流行言葉)」といった捉え方をしてしまうのも無理はありません。 第2期の成功事例を「今まで通信機能を持っていなかった機器に、通信が出来るという付加価値を付け、ビジネス価値を向上させることは可能か」とした場合に、日本企業のコマツ「KOMTRAX」が挙げられます。 1998年頃、盗難油圧ショベルでATMを破壊し金銭を強奪するという事件が日本で多発していました。油圧ショベルの悪用を防ぐために「GPSを付ければ盗難対策になるのでは」というのが発端となり、通信機能付き建設機「KOMTRAX」が誕生しました。KOMTRAX搭載の建設機は作業現場から500メートル以上離れると、キーを入れてもエンジンがかからないようになっており、盗難者の間では「コマツの機械は盗んでも使えない」という評判がたち、これが好評でKOMTRAXは大きく成長することになりました。世界に30万台以上普及したKOMTRAXのデータから、コマツでは世界の建設状況を把握出来るようになり、建設機の稼働状況から市場動向の先読みを行っています。コマツでは他にもAHSと呼ばれる無人ダンプトラック運行システムを実現しています。 KOMTRAXのような仕組みは、第1期の通信機器の爆発的な増加により、無線チップ、機器製造コストが下落したことで、従来非ITと呼ばれていた分野でも応用出来る環境が整いました。インターネットが当たり前の物になったとはいえ、私たちの身の回りのモノは、インターネットに接続していないものが大半です。 電力やガスといった生活インフラも設備の交換に伴いIoTが進んでいくことでしょう。車もIoTが進めば自動運転が実現した世界が誕生するかもしれません。