人の心を“つぎ、つなぎ、かがやく──”ミラモアの5年を稲木ジョージが語る
── KINTSUGIだけでなく、ミラモア自体がコンセプチュアルなジュエリーなのですね。 稲木 すべてのコレクションに同様の物語や概念をもたせています。なぜ、稲木ジョージが作るのか、そこにすら意味があるんです。すべて、私の実体験、インスピレーションから作ったものですから。 ── コンセプトメイカーが稲木さんの本質ということですか。 稲木 デザインで真新しいものなど、もはや必要ないと思っています。世の中にはすでにものがあふれていると思いませんか? しかし、伝統に目を向けるとすでに知られていて、認められている素晴らしいものがたくさんあり、その魅力を再編集、再発見していく作業に面白さを感じています。金継ぎも修復技法としては認知されていますが、装飾品としては未知。根本の概念をジュエリーとして再編集し、新しい存在にする。「古い価値観を破壊し、新しい価値観を作る」ことをモットーにしていますが、これがまさに一例です。
── 伝統的で既知の美意識から、新しい美意識を生み出すという解釈でしょうか。 稲木 はい。ほかにも異なるチェーンを組み合わせた「デュオチェーン」や、ダイヤモンドを点字にした「点字ダイヤモンド」がありますが、すでに多くの人に認知されているものにアイデアを加えて未知のものを作っています。皆知っているが、見たことのないデザインを理想に……。それこそが、ユニバーサルデザインであり、私の表現したいものなんです。
── 伝統を見つめながら未来志向もあわせもつ稲木さんですが、創設からの5年間を振り返っていかがでしょうか。 稲木 まだ5年なんですよね。あまり人の話は聞いてきませんでした(笑)。自分のヴィジョンがあるのに、ほかの人のヴィジョンを気にしてしまうとブレますから。CEOでありブランドヴィジョニア(ブランドの方向性を決定する責任者)でもあるので。創業時は、私の世界観に懐疑的な意見もありましたが、人からどうこう言われても自分がブレなければそのセンスがいつしかスタンダードになる。改めて自分の力を信じることができた5年間でした。