人の心を“つぎ、つなぎ、かがやく──”ミラモアの5年を稲木ジョージが語る
日本の伝統修復技法“金継ぎ”に着想を得たジュエリー“KINTSUGI”は世界でも類のないコレクション。この4月に5周年を迎える「ミラモア」の稲木ジョージがNYから来日した。5周年のイベントを前に5年の月日を振り返り、未来のヴィジョンを聞いた。
日本の伝統修復技法“金継ぎ”に着想を得たジュエリー“KINTSUGI”は世界でも類のないコレクション。独創的で着実に支持者を増やしこの4月に5周年を迎える「ミラモア」のCEO兼ブランドヴィジョニアの稲木ジョージがNYから来日した。5周年のイベントを前に5年の月日を振り返り、未来のヴィジョンを聞いた。 ── 金継ぎをジュエリーに見立てたKINTSUGIコレクションは、発表されてから日本だけでなくニューヨークでも人気ですね。誕生秘話を教えてください。 稲木ジョージさん(以下稲木) ブランドを創設したのは2019年ですが、KINTSUGIのジュエリーを思いついたのは2017年です。海外の方が金継ぎと仏教のフィロソフィーを語っているプログラムを見て閃きました。デザイン上の金継ぎだけでなく、哲学も感じてもらえるものにしたかった。それがKINTSUGIの生まれたきっかけです。
── ジュエリーとしてではなく、ストーリーを感じてもらえるものを作りたかった、ということですね 稲木 はい、2021年に行われた東京パラリンピックの閉会式のスピーチで金継ぎのことが触れられましたよね。“誰もが持つ不完全さを受け入れ、隠すのではなく大切にする”という内容でした。これは、すべての人にいえることであり、人は傷つきながら成長しますが、傷すらも肯定し、前向きに進んでほしい、そんな気持ちを込めたのです。
── 稲木さんが成長するきっかけとなった自身の金継ぎ的ストーリーをうかがってもいいですか? 稲木 私の場合は、幼少期にコンプレックスがありました。家族との距離感がつかめず、愛情が何かもわからない時期がありました。家族とのコミュニケーションができないと、当然社会との関わり合いも難しい。人を全く信用できない辛い時期が結構長く続いて……。それが私にとっては逆境ともいえる時代でした。 ── いまは、多くの友人や仲間がいてコミュニティを築かれているように見えますが、どのように逆境に臨んだのでしょうか。 稲木 辛い時期でしたが……自分がこうしたい、ということを伝える際に熱量をもって相手に接することで、ポジティブな輪ができることを徐々に実感しました。エネルギーや気持ちは伝播していくんですね。そうするなかで、自分を徐々に信じることができ、他者への信頼もできるようになっていきました。いまも、共感してくれる人々に対してただジュエリーをモノとして勧めるのではなく、コンセプトもともに自分のストーリーを身に付けてもらい、体験してほしい、そういった気持ちで取り組んでいます。