寄付金で建設された吹田スタジアムの意義
1972年完成の万博記念競技場の老朽化に伴い、ガンバは2008年に新スタジアム建設構想を打ち出した。 しかし、ホームタウンの自治体頼みでは、状況は遅々として進まない。メインスポンサーのパナソニックの文化事業部に相談したところ、寄付金で建設費をまかなう方法があるとアドバイスされた。 最初は逡巡したが、大阪府出身の川淵三郎・日本サッカー協会名誉顧問、関西経済同友会の下妻博会長(故人)らから「大々的に寄付金を募ったらどうか」と背中を押され、総工費約140億8567万円を企業及び個人からの寄付でまかなう異例のプロジェクトがスタートした。 4万人規模のスタジアムを建設する場合、1席当たり50万円、総額で200億円が相場とされている。しかし、市立吹田スタジアムはコンペを勝ち抜いた竹中工務店のもとで1席あたり35万円に圧縮された。ちなみに、この金額は新国立競技場の1席の実に2割という廉価となる。 まずは建設地に決まった万博記念公園内の土地代を低く抑えたと、野呂社長は振り返る。 「通常の4万人規模のスタジアムと比べて、底面積が2割から3割は狭い。スタジアムの体積の小ささは世界でも屈指。だからこそ、より臨場感を出せるわけです」 外装はコンクリートがむき出しになっているが、華美さよりもサッカー観戦を楽しんでもらうコンセプトを最優先させた。各パーツを工場で作って現場へ運ぶ「プレキャスト工法」も工期を短縮させ、建設費を低く抑える一因を成した。 「それでも、ホームのゴール裏の設計変更をしたので、その分だけお金がかかりました。パーツがすべて均一だから安くできたんですけど、あそこだけパーツが異なるので」 野呂社長は苦笑いしたが、実際、建設費の増額分は億単位に達したという。寄付金の受付期間は2012年4月からの3年間。目標額に達しない伸び率を示した時期もあったが、2014年にJ1、ナビスコカップ、天皇杯の三冠を独占したガンバの快挙が追い風となった。 最終的には法人延べ721社(約99億5000万円)、個人延べ3万4627人(約6億2200万円)の寄付金が集まり、不足分の約35億円はスポーツ振興くじなどから助成金が充てられた。