寄付金で建設された吹田スタジアムの意義
2013年12月の工事着工から約1年9ヶ月。ガンバ主導で昨年9月に完成した新スタジアムは吹田市に寄贈され、ガンバが指定管理者として運営管理を担う。長く本拠地としてほしいとの思いから、吹田市との指定管理者契約は竣工から2063年3月31日までの47年6ヶ月間に及んでいる。 土地は大阪府から吹田市が借り、ガンバは土地賃貸料を含めた年間5億円の維持費を負担する。吹田市側はいっさいの経費を支出せずに公共施設を所有し、ガンバ側には固定資産税を支払う必要が生じない。 ヨーロッパをほうふつとさせるスタジアムの雰囲気以上に、実質的なガンバの「自前」となった点を、名古屋戦を観戦に訪れたJリーグの村井満チェアマンも高く評価する。 「いわゆる日程の問題やファンサービス、飲食などさまざまなものをクラブ主導で行える。これが何よりのメリットなので、今回のスキームはサッカー文化を発展させるうえで極めて重要な要素になると思います」 日本国内では北九州で球技専用の新スタジアムが建設中で、京都でも着工が決まっている。広島では広島市民球場跡への新スタジアム建設を求める署名が集まり、甲府や名古屋でも建設機運が盛り上がっている。 100億円を超える寄付金を望める状況を含めて、地域にとってもクラブにとっても、そして観戦する側や選手にとっても理想的なスタジアムが生まれる状況はなかなか揃わないかもしれない。それでも、野呂社長のもとにはJクラブの社長から数多くの問い合わせが寄せられているという。 「サンプルとして、ここを目指してくれていると思います」 初めての公式戦は、鹿島アントラーズを迎える28日のファーストステージ開幕戦。6月7日にはキリンカップが開催され、青一色に染まったホームのゴール裏はガンバモードから日本代表モードに切り替わる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)