京都大に関関同立、合格実績が飛躍したのは本気でやる「主体的な学び」の成果
■主体的な学びを大学合格実績につなげる
今回は特長のある教育コンテンツで注目される学校ではなく、指導要領でもうたわれている「生徒の主体的な学び」を促すことに力を入れていて、躍進が期待できる学校を紹介します。この「主体的な学び」については多くの学校で掲げられていますが、本当に生徒が主体的に動いていると感じられ、大学合格実績につながっている大阪の進学校2校を取り上げます。 2校の共通点は、3年前に高校募集で最上位の特進コース（通称）を新設し、その1期生が2024年春の大学入試で目を見張る結果を出したことです。また、その自信とノウハウを中高一貫コースにも応用しようと、中学入試で特進コース（通称）を新設していて、来春の中学入試の注目校となっています。
■生徒たちに根付く「MJGスピリット」
1校目は箕面自由学園（大阪府豊中市）です。近年は高校の人気が高く、高校入試の志願者数で毎年のようにトップを争うほどになっています。高校入試の難化に伴い、中学からの入学を検討する受験生が増えてきています。 箕面自由学園の今春の大学合格実績の躍進は中学受験においても大きな話題となっています。高校の「スーパー特進コース」を中心に徐々に大学合格実績を伸ばし、21年度には国公立大学に69人、関関同立に162人となっていました。その21年度から「スーパー特進コース」の上に「SS特進コース」を設置し、さらに強化を図った結果、その1期生が受験した24年度入試では、初の東大合格を含めて国公立大学で3年前の2．3倍にあたる159人、関関同立で同2．9倍の472人となりました。次年度以降、さらに期待が膨らみます。 箕面自由学園の教育指針の一つに「MJGスピリット」と呼ばれる「自分でデザインする力を身に付けるために、自分がやると決めたことに挑戦し続け、失敗してもへこたれず、自分で考え、行動し、自分なりの答えを見いだしていく精神」があります。 「MJGスピリット」を身に付けるために、生徒たちの多くが主体的に学んでいます。それは、生徒が自分で選んで受講する放課後の「デザインタイム」の受講数の多さや、早朝からの自習時間の利用者数の多さで分かります。早朝の自習時間には校長や副校長が生徒に声掛けしており、そのことがさらに生徒たちの励みになっているようです。 他校にないこの雰囲気がどのようにしてつくられているのか、その答えは「校長講話」にあります。生徒たちに人気の行事となっている「校長講話」は、中3時に1回、高1時に2回、高2時に1回行われます。主なテーマは高校進学、勉強法、大学受験についてですが、その話は「どう生きるか？」といった人生論にも及びます。感想文は多い時で2000人分以上になりますが、田中良樹校長は1枚ずつ丁寧に読み、赤ペンで心のこもった返事を書いています。 同校は本気で中学校の改革に乗り出します。高校で成功したノウハウを中学に導入し、中学から入学する生徒を「より高みへ」導く指導を行うために25年から新しいコース編成を行います。従来のコースの最上位に「理数探究コースS」が設置されます。それだけ難度設定も上がりますから、これまで以上に高い学力と意欲のある生徒が集まることを想定し、「学習量」×「学びの質の高さ」×「高校で実績を出した教師陣の投入」が約束されています。 このコ－スの柱となるのは三つ。「中3時で英検2級を目指す指導」「数学の習熟度別でのハイレベルな指導」「教科の面白さの本質に迫る、探究数学・科学実験」です。 これからの中学校での教育について田中校長に尋ねると、以下の二つの点を強調していました。一つ目は「中学校で大切なのは、基礎学力をしっかりと身に付けることと、教科への興味関心を高めることにあるので、そこはこれまで以上にきちんとやっていきたい」、二つ目は「中学3年生の位置付けを従来の高校1年生並みに持ってくること」でした。田中校長には何らかの秘策がまだまだあるような口ぶりでした。 シン化する箕面自由学園中学校。その「雰囲気」と「熱量」をぜひご自身の目で確認してください。
