タクシー業界が取り組むスマホ配車 背景に「黒船」ライドシェアの存在
スマートフォンでタクシーを呼び出せるアプリは、いまや選ぶのに苦労するほど多数存在する。東京では、タクシー業界団体である東京ハイヤー・タクシー協会がアプリ「スマホdeタッくん」の提供エリア拡大を発表したが、サービス向上を追求する既存タクシー業界の目に映るのは、ライドシェアという『黒船』の脅威だ。
配車アプリはサービスエリアを拡充
タクシー配車アプリの利用方法は、「スマホdeタッくん」を例にとると、画面に表示された地図上でタクシーを呼びたい場所を指定し、その他の条件(車種や時間など)を入力後、「注文ボタン」を押す、という流れ。 あとは、オペレーターが空車のタクシーに無線で指示して配車してくれる。昔からある電話による無線配車と仕組みは似ているが、知らない土地でもたやすく住所を伝えられるなどより便利になっているほか、アプリによっては決済機能も含む。 帝都自動車交通や日本交通などのタクシー事業者のほか、複数社が加盟する無線グループや業界団体がアプリを提供中だ。「スマホdeタッくん」は後者であり、2014年1月にサービスを開始した。従来のカバーエリアは東京23区、武蔵野市、三鷹市だったが、今年2月からは多摩地区にも拡大し、島しょ部を除く都内全域で利用できるようになった。今後は、東京都内のみならず、他道府県へのエリア拡大も検討する。
浸透しているとは言いがたいスマホ配車
一方で、「スマホdeタッくん」に限らず、都内でスマホ配車が普及しているとは言いがたいデータも。東京ハイタク協会によると、都内でタクシーを利用する人の90%以上が、走行中のいわゆる「流し」の空車車両を呼び止めたり、駅などのタクシー乗り場からタクシーを利用しており、スマホを含む無線配車は数%にとどまるという。15日に開かれた「スマホdeタッくん」の新サービス・機能を紹介する記者発表会で、東京ハイタク協会の川鍋一朗会長(日本交通社長)は、「まず、スマホによるタクシー配車を浸透させる必要がある」と指摘した。 むしろ、都心よりも地域の方が浸透しやすいのかもしれない。記者発表に出席していた千葉県柏市のタクシー事業者は「柏市は、東京都内とはちがって無線配車が6割を占め、残り4割が流しと乗り場」と説明している。