タクシー業界が取り組むスマホ配車 背景に「黒船」ライドシェアの存在
安価に利用客を運ぶ「ライドシェア」の脅威
記者発表で、川鍋会長は、サービス向上の取り組みへの注力ぶりも強調した。冒頭のあいさつでは、2020年までに初乗り距離短縮による値下げ、高齢者や車椅子の人でも乗りやすいユニバーサルデザイン車両の1万台導入、全車両へのタブレット端末搭載による多言語対応および位置情報の提供、の3つに取り組むと表明。『タクシーとIT、その未来』と題した公開トークセッションでも、タクシー乗務員の語学力向上によりサービスの質的向上を図る考えを示していた。 背景にあるのは、自家用車を用いてタクシーよりも安価に利用客を運ぶ「ライドシェア」の脅威だ。違法な「白タク行為」などとして、タクシー労使がともに反対の声をあげる一方、安倍晋三首相は昨年10月の国家戦略特別区域諮問会議で、「過疎地等での観光客の交通手段として、自家用自動車の活用を拡大する」と、特区でのライドシェア導入を後押しする発言を行っており、予断を許さない。 仮にライドシェアが全国各地に本格導入された場合、タクシー業界がいくら「白タク反対」と叫ぼうが、利用客はより価値があると認めたサービスに軍配を挙げるだろう。価値には、利便性、コスト、安全性などが含まれる。利用客に選ばれなければ、大正元年(1912年)以来の歴史を持つタクシーも衰退は免れない。 使いやすい運賃に改め、乗りやすいタクシーを導入し、多言語対応を図る。タクシー配車アプリのエリア拡大も、同じくサービス向上策の一環と位置付けられる。『黒船』が到来するまでに、利用者の心をつかんで「選ばれるタクシー」になれるだろうか。 (取材・文:具志堅浩二)