井端が語っていた「プロは契約社会」の持論
WBCでヒーローとなった中日ドラゴンズの井端弘和が、あれからわずか8か月後にチームを退団、自由契約となった。いったい誰がこんなジェットコースターのような展開を予想できただろうか。日本シリーズの裏で行われた契約更改の下交渉で球団フロントから唐突に3000万円の提示を突きつけられて井端は驚いたようである。 ■落合GMが決めた大幅ダウンの年俸 年俸提示額を決めた落合博満GMは、「体にメスも入れたし、億以上を出して球団がリスクを背負えるか、という判断。戦力外の選手に金額提示はしない」とコメントしたらしいが、1億9000万円の年俸から3000万円への減額提示は、「あなたはいりません」という意志表示と同じである。 井端が足首とヒジに入れたメスは何も選手生命を左右するような深刻な手術ではない。「億以上がリスク」ならば、せめてインセンティブをつけて8000万円や7000万円の提示額で良かったのではないか。“生え抜き優先主義”や“フランチャイズの熱”というものに否定的な落合GMらしい思考から出た結論だろうが、これは中日一筋の功労者に対して、そのプライドと気持ちを踏みにじるような“冷酷なリストラ”だと思う。 ■退団を予測していたような発言 私は、この6月、井端に長い時間インタビューをする機会があった。デジタル音声には、まるで彼が、こうなる日を予測していたかのような話が、録音されていた。 「プロは契約社会ですよね。球団から『いらない』と言われれば、それまでなんです。中日ドラゴンズに育ててもらい愛着はありますが、そういう日が来ることもなくはないでしょう? 数年前にFAの権利を得たときも、他のどこかの球団から欲しいという話があれば、どうなっていたかはわからなかったと思っています。評価されて魅力のあるオファーがあったならば、移籍していた可能性もあったと思うんです。たまたま、そういう話がなかっただけなんですよ。球団は、5年という長期契約をオファーしてくれましたが、その年数を僕が望んだわけではありません。しかも、年俸の変動性で成績に応じて契約更改を行うものだから、実質は単年契約と同じなんです」