札幌、鎌ケ谷のファンは知っている 上沢直之は不義理な男ではない
ソフトバンクがレッドソックス傘下3AからFAとなった上沢直之投手(30)を獲得することが決まって以降、SNSを始めインターネット上では批判の声が飛び交っているが、筆者は上沢の決断を応援したいと思っている。 【写真あり】上沢が自画自賛!新庄監督考案ド派手ユニ「僕が一番似合ってる」 批判が集まる主な理由は「不義理」だということだ。今季の上沢は日本ハムからポスティングシステムで米球界に挑戦したが、右肘痛なども影響してわずか1年で帰国。海外FA権取得前にポスティングシステムを容認してくれた古巣へ戻るべきという意見が多数を占めた。帰国後に日本ハムの球団施設を練習で利用していたことも「不義理」の理由に挙がり、日本ハム復帰をファンに期待させたという意見も多かった。 確かに上沢のソフトバンク復帰に日本ハムファンは残念がったことだろう。不満もたくさんあるだろう。ただ、SNSやインターネットのコメント欄で何を書いてもいいわけではない。インターネット上で上沢に対して罵詈(ばり)雑言を並べている人々と、私が知っている日本ハムファンのイメージは似ても似つかない。 筆者は14年~17年まで日本ハム担当の記者だった。東京から札幌に居を移し、日本ハム取材に日々奔走。12球団随一のファンの温かさを知っているつもりだ。特に「3ボール」になった時に当時の札幌ドームのスタンドから拍手が沸き起こった時は心底驚いた。それが制球に苦しむ投手への励ましの拍手を意味し、毎回、拍手が発生することにさらに驚いた時のことは忘れられない。他球団に対して含め、選手へのブーイングもあまり聞いたことがないほどだ。 上沢はファンサービスに熱心な選手で、ファンに気さくな選手でも知られていた。モノマネやトークが達者で、オフのイベントなどではよく持ち前の明るさを発揮していた。2軍時代は鎌ケ谷の2軍施設に集まった大勢のファンに声を掛けられては、笑顔でサインをしている姿もよく見ていた。1軍で先発の軸になってからも人柄は変わらず、取材対応も“一見さん”、担当記者問わず、誰にでも丁寧だった。筆者は上沢を「不義理」だと思ったことはない。むしろ、ナイスガイな印象しかない。上沢をよく知る日本ハムファンも同じ意見だと思っている。 ポスティングシステムで移籍後、日本球界復帰時に旧所属球団に戻らなければいけないルールはない。獲得オファーを受けた球団の中から、条件に勝る球団を選ぶのはプロ野球選手として仕方のない判断ではないだろうか。上沢は熟考に熟考を重ね、決断を下したはずだ。 上沢への不満が募るファン心理も分かる。「不義理」だと言いたい気持ちも分かる。ただ、その不満を一通り言い終わったら、“元日本ハムの選手”として再び上沢を応援することはできないだろうか。エスコンフィールドのスタンドから拍手で迎えられる上沢と日本ハム打線による、意地と意地のぶつかり合いを見てみたい。そう思うのは筆者だけではないはずだ。(記者コラム・柳原 直之)