フィリップ証券が国内初の映画のデジタル証券販売へ、25年公開『宝島』の関連権利をST化
フィリップ証券が映画『宝島』をデジタル証券化
フィリップ証券が、同社STOの第一号案件として、映画『宝島』の映画製作委員会への出資で得られる権利をデジタル証券化し、小口販売することを7月12日発表した。なお同デジタル証券は7月24日より販売を開始。映画に関連する権利のST(セキュリティトークン/デジタル証券)化は日本初の取り組みになるという。 またSTO(セキュリティトークンオファリング)プラットフォームは、Securitize Japan(セキュリタイズジャパン)の基盤が利用される。 同商品への投資家は、『宝島』における劇場配給・ビデオセル・放送権の販売等から得られる収益を運用利回りとして得られるという。また同商品は投資規模(口数)に応じて、特典映像、劇場用宣伝ポスター等のグッズ取得や、試写会等の限定イベントへの参加、エンドロールへのクレジット表示、脚本の付与、特別な経験や体験等ができるとのこと。なお30口以上の投資により、特典はすべて受けられるようだ(宝島については下記参照)。 同デジタル証券の出資募集総額は3億6,800万円。発行価格は1口10万円で発行口数は3,680口となる。申込単位は1口以上1口単位となっている。 募集期間は7月24日から年08月13日までとなっており、投資期間は2024年8月15日~2027年5月31日の約3年。分配日については、毎年6月1日から毎年5月末日までとなる計算期間の末日から3か月以内とのこと。ただし初回の計算期間は2024年8月15日から2025年5月31日になるとのことだ。 フィリップ証券は今回映画作品を小口証券化するに至った背景として「SNS等が一つの情報伝達媒体として重要視されてきている環境の中で、従来の『映画を一方的に観る』時代から、『制作者と支援者の方々が一緒になって創り育てる』時代に変遷すると考えており、STOという新しい金融技術がこれを具現化できると確信したことです。本商品はその第一歩として、本映画作品の興行収益の一部が運用利回りとなるよう設計されています」とコメントしている。 なおフィリップ証券は、シンガポール拠点のフィリップキャピタル(PhillipCapital)グループの日本法人。同社は2022年2月に、米国の大手デジタル証券会社セキュリタイズ(Securitize)の日本法人セキュリタイズジャパンと協業し、一般投資家向けのSTO商品開発に着手し始めたことを発表。今年6月20日にSTOを取り扱うための「第一種金融商品取引業」の変更登録が完了していた。 ●STOプラットフォームについて 前述したように今回のST発行・管理には、米国の大手デジタル証券会社セキュリタイズ(Securitize)の日本法人セキュリタイズジャパンが協業し、同社の基盤「Securitize PF」が利用されているという。 なお「Securitize PF」はプライベート型/パブリック型の双方のブロックチェーンに対応しており、案件毎にST発行先のチェーンを選択することが可能となっている。今回のSTにおいては、プライベート型であるQuorum(クオーラム)が選択されているという。 セキュリタイズジャパンによると「Securitize PF」は、自己募集型STO、銀行販売型STO、証券会社販売型STO等、様々な販売スキームに対応していますが、今回の取り組みにおいては、証券会社販売型STOに対応した機能を提供しているとのこと。 また「Securitize PF」は、グローバルで様々な証券化・ST化スキームに対応してきた実績があり、日本においてはこれまで、社債ST、受益証券発行信託ST、合同運用指定金銭信託ST、不動産特定共同事業法STに対応してきたが、今回GK-TKスキームのST化に対応した実績が加わることになったという。 なおGK-TKスキームは、合同会社(GK)と匿名組合(TK)を用いた投資スキームだ。合同会社をSPC(投資を目的として設立された特別目的会社)として、匿名組合を出資形式とするのが特徴となっている。 ●『宝島』とは 映画『宝島』は、真藤順丈著の同名の直木賞受賞作が原作となる2025年公開予定の作品だ。主演を妻夫木聡、監督を大友啓史が務める他、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太が出演する。 日本復帰前の沖縄を舞台に、米軍基地から物資を奪う「戦果アギヤー」と呼ばれた若者たちを描く内容となっている。
大津賀新也(幻冬舎 あたらしい経済)