「着物はピシッと、きれいに着たい。美しい着物姿はカッコイイと思います。」料理家・荒木典子さんの着物の時間。
稽古は洋服だが、発表会などはもちろん着物。 「舞台のセンターで、ほかの鳴り物の方や三味線、唄の方を従えて(笑)。邦楽は対面ではなく、全員前を向いて演奏するので自分だけが頼り。何度経験してもドキドキします」 ほかにも20代の頃からお茶を習っている。 「若い頃は、お初釜には振袖で席入りすることが多かったです。母が結婚式で締めたグリーン地に鶴(右上)の華やかな袋帯に、揃いの鶴の振袖を合わせてお点前をしたことも。10年ほど前からお茶のお稽古を再開したので、お茶会に出席することが多いですね。そうそう最近、日本舞踊を習い始め、お稽古で浴衣を着ることが多くなりました」 着付けは本を見て勉強したという荒木さんだが、常に心がけていることがある。 「自己流なので今まで失敗もありました。帯がうまく結べず、とりあえず締めてお茶会の席に行き、先輩方に直してもらったことも。着物はきれいに着たいんです。特に衿の合わせはピシッとさせ、もったりとした感じになるのは避けるように気をつけています。 半衿と足袋は白。白の美しさは格別です。正統な着物姿が好きなんです。それと日舞を習うようになって日常での動作が気になるようになりました。踊りの先生の、手先まで神経の行き届いた所作の美しさは憧れです」 紬よりも染めのものを着る機会が多いが、 「もちろん紬も大好きです。大島紬の光沢感や結城紬の温かみは魅力的。だからこそ、もう少し年を重ねたときに楽しみたいですね」
荒木典子 さん あらき・のりこ 料理家 神戸生まれの京都育ち。大学卒業後フランスへ留学。帰国後、調理師学校で料理の基礎を学ぶ。東京の出版社で料理本の編集などに携わり、その後、料理家として独立。シンプルだが季節感のあるレシピが人気。著書に『旬の和ごはん』(講談社)、『いちばんくわしい 基本のおせち料理』(成美堂出版)など多数。
撮影・青木和義 ヘア&メイク・高松由佳 着付け・小田桐はるみ 文・大澤はつ江 撮影協力・YYARTS
『クロワッサン』1107号より
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