鳩待峠発から至仏山と巡る、春限定の残雪期ルートで行く白銀の至仏山登山と尾瀬ヶ原ハイク
ミズバショウで知られる尾瀬。雪深い群馬県片品の百名山・至仏山は植生保護のために例年6月末まで入山が禁止されています。本年度は6月21日(金)まで閉鎖されるそうですが、例外的に残雪期利用期間という残雪期登山が可能な日程が設定されます。雪山ファンが大喜びで駆け回る至仏山登山にスタッフも挑戦してきました。 【写真】残雪期の至仏山登山と尾瀬ヶ原ハイキングを見る(全17枚)
恒例のGW最終日まで雪山登山利用が可能
日本を代表する景観に優れ、豊かな植生と広大な池塘が広がる原野、そして唱歌で親しまれているミズバショウで知られる尾瀬。新潟県~群馬県~福島県にまたがる深奥部には、東北最高峰の燧ヶ岳と、群馬県片品の名峰・至仏山(標高2228m)の日本百名山の2座が向き合うという登山ファンにとって最高の条件が揃っています。 一方で至仏山の植生保護のために管理する群馬県が適正利用のルールを設定しています。至仏山保全対策会議(事務局:財団法人尾瀬保護財団)が策定した「至仏山保全基本計画」に基づいた、立ち入り防止柵の設置、登山道の維持補修、植生回復のための植生ネットの設置などです。これに入山規制などの利用ルールが加わります。その利用ルールは残雪期の入山(4月下旬から5月6日まで)と残雪期の登山道閉鎖(5月7日から6月下旬まで)、山開き直後(登山道閉鎖解除から7月中旬)の入山の3段階が設定されています。 例年、保全対策会議関係者の現地調査などを踏まえて日程が決定され、今年の残雪期利用期間が4月19日~5月6日と発表されました。今シーズンはとくに残雪が「非常に少ない」状況でした。スタッフが訪れたのはGW終盤の閉鎖直前でした。
ハイシーズンは反時計回り、特別期間だけ時計回りが可能
通年で尾瀬の群馬側ルートは麓のベースとなる戸倉と大清水から先は車両通行不可です。至仏山へは戸倉からバスおよび乗り合いタクシーを利用して登山口の鳩待峠に登ることになります。ちなみにバスと乗合タクシーの料金は共通で片道1300円でした。 鳩待峠からは本来は山の鼻方面に向かう登山道を使用します。一度尾瀬ヶ原際の山の鼻に降り、そこから至仏山登山道を登り、小至仏山を回って鳩待峠に戻る反時計回りのコースなのですが、この特別期間のみ逆の時計周りが可能となっています。スタッフは鳩待峠から支尾根稜線上にある悪沢岳に登り、尾根を戻って小至仏山から至仏山の山頂を踏み、山の鼻に下ります。 登山口先から残雪が広がります。雪面はすでに踏み跡と融雪で、どれが正しいトレースなのか不明瞭な状態ですが、赤いリボンを目印に、大きく道を逸れることなく登っていけます。気温は穏やかから暑いという感覚で、雪のコンディションはダダ下がり。登りでは足が後ろに流れます。標高1800m地点から軽アイゼンを装着。振り返れば燧ヶ岳の特徴的な山頭部がチラリ。ほぼ雪無しです。 森林地帯を抜けると前面には小至仏山と至仏山北面の雪原が広がります。登山者が列を作るルートから一度外れて悪沢岳(標高2046m)へ。ほとんどの登山者は目もくれず至仏山を目指すようで、踏み跡もわずか。山頂とは気づかないような低木帯で気がつけば足元に標識を発見。そこから正面に見えるは武尊山でしょうか。堂々たる山容を見せてくれています。 元のトレースに合流し小至仏山へ。小至仏山へは雪面を直登します。この直登が難儀かも知れませんが、小至仏山頂(標高2162m)からの眺望は素晴らしいものがありました。360度の大パノラマです。北東の燧ヶ岳が豊かに裾を広げ、視界右端の東寄りに日光白根山の鋭鋒が飛び出しています。北には平ヶ岳。そして北西方面には越後駒ヶ岳から西に巻機山をはじめとする越後の山塊が壁を作り雄大な景観を見せつけます。