「万引きがやめられなかった」父から卓球のスパルタ教育を受け自暴自棄になりかけた女性「今は虐待から逃げた人と共に生きる日々」
── それはつらいですね…。 高橋さん:ただ、私もさすがに毎日練習をしていたから、卓球自体は上達してきて。岐阜県で1位、2位のレベルで全国大会にも出場するまでになりました。とはいえ、父への恐怖心が募り、自分の気持ちが萎縮していくのを感じていました。 そのうち、自分のストレスを学校の先生や友達にぶつけるようになっていきました。学校で友だちに八つ当たりしたり、先生から態度を注意されても「私は悪くない」と反抗したり…。勉強も全然身に入らなくなり、成績が落ちていきました。気づくと友達がいなくなっていて、学校ではすっかり孤立した状態に。自分でも、「こんな子と一緒になんていたくないよね」と思うくらい、イヤな子どもになっていたと思います。
■万引きがやめられなくなった ── ずっと我慢して溜まっていたストレスが、学校で爆発してしまったのですね。 高橋さん:そうですね。あとは、万引きがやめられなくなって…。気づくと、万引きをしているんです。といっても取ったものは全然、大事にできなくて結局、捨ててしまっていたのですが…。あのころは、万引きで何度もお店の人に注意されていました。 ── 自分ではどうしようもできない状態だったんですね。お母さまに相談したりはしなかったのですか?
高橋さん:母は自由奔放というか、「自分で考えて決めなさい」という考え方で。父との卓球を辞めたいと母に相談したことはあるのですが、「それはお父さんと亜美の間で起こっていることだから、私は口を出さない」と言われてしまったんです。それで「ああ、おかあに言ってもダメなんだ」と母に頼ることを諦めてしまっていました。「自分で何とかしなきゃいけないんだ」って。 振り返ると、あのころは父と母も安心な関係でなかったのかも。母は「子どもがこんなに苦しんでいるんだから」と父に伝えることがどうしてもできなかった。それは何か事情があってのことだったのかもしれません。