格闘技イベント「RIZIN」の試合はどう決まる? マッチメイク担当者を直撃
“ハイレベル=良い試合”ではない RIZINにランキング制度がない理由
──マッチメイカーとしては、「実力が拮抗している選手同士でやらせてあげたい」というような意識はありますか? 柏木信吾 興行の目的によってケースバイケースです。拮抗しているからといって、必ずしも面白い試合が見られるとは限りません。 RIZINは選手のランキングシステムがないんですけど、ランキングというシステムに縛られると、その時その場における良いマッチメイクがつくれなくなってしまう。競技的には、2位と3位の選手の試合を組むのが正しいかもしれないけど、玄人にしかわからない試合展開になってしまう可能性もあります。 9月にあったRISE(※RISE WORLD SERIES 2024 YOKOHAMA)というキックボクシングの大会を見に行ったんですけど、メインイベントのタイトルマッチ「志朗選手 vs. 田丸辰選手」が、ものすごくハイレベルな試合だったんです。 ただ、“ハイレベルな試合”としか表現できない。レベルが高すぎて、両選手共にやっていることが異次元すぎる。フェイントで勝負しているというか、チェスで言うと“三手先で勝負している”ような状態。だから、格闘技に詳しくない人にとってはわかりづらい。 言い換えると、“わかりやすい面白さ”が欠けてしまう。そういった試合を見て、どれだけの人が「すごかった! 面白かった!」と感じられるか? を考えないといけません。 もちろんこれは良い悪いの話ではなくて、そういう試合のニーズが多いマーケットであれば、玄人向けの試合を多く組むべきです。ただRIZINの場合は、できるだけ幅広い方々に格闘技を見てもらいたいという思いがあるので、もう少し間口を広げたマッチメイクを意識しています。 ──RIZINではランキングシステムがないからこそ、そこに縛られず、格闘技として“幅広い面白さ”を意識していると? 柏木信吾 簡単に言えばバランスですね。当然、玄人好みの試合も間違いなく必要です。ハイレベルな試合によって、RIZINというイベントのアイデンティティが保たれる側面もあると思います。 でも、そんな試合ばかりだとなかなか理解しづらいというか、見ていて「よくわかんないな……」と感じられてしまったらもったいないので、RIZINとしては正しくないのかなと思います。 選手個々の強みと弱みが、ぶつかり合った時にどういった化学反応が起きるのか。もしくは、強みと弱みが認識されている選手に対して、未知の外国人選手をぶつけることで、試合前からワクワクしてもらう。いずれの場合も、実際の試合で答え合わせをしてもらう。そういった形で楽しめるのが、格闘技の魅力なんじゃないでしょうか。