格闘技イベント「RIZIN」の試合はどう決まる? マッチメイク担当者を直撃
「あの日、あの場所、あの瞬間、鈴木千裕の方が強かった」
──どうすることもできない部分ではあると思いつつ、期待された試合が一瞬で終わってしまうことに対して、マッチメイカーとしてはどのように感じていますか? 柏木信吾 中立の立場として、どちらに勝ってほしいというのはないんですけど、両選手が見せ場をつくって決着がつくのが理想ではあります。ただ、そういう試合はなかなかないんですよね。 早く決着してしまう試合に関しては、それ自体が衝撃的な終わり方という意味で格闘技の醍醐味だと思います。観戦した人が必ずしも笑って帰れないというか、満足して帰れない、様々な感情を持ち帰る。決着の付き方においてもいろんなバリエーションがあるので、個人的には、格闘技は一番感情が揺さぶられるスポーツなんじゃないかって思っています。 のめり込めばのめり込むほど、選手に感情移入すればするほど、自分の感情も揺さぶられる。笹原さんのつくったキャッチコピー「泣いて、笑って、格闘技。」は象徴的で、人間臭さがこれ以上ないくらい出ている部分に、魅力を感じています。 ──試合が早々に決着してしまう=実力差があるというわけでもない? 柏木信吾 そうですね。実力差があるというわけではなくて、格闘技は相性や作戦、タイミングなど、いろいろな要素が複雑に絡み合って結果が出るものです。よく言われているのが「その日、彼の方が強かった」ということ。 たとえば、鈴木千裕選手がヴガール・ケラモフ選手に勝利して、フェザー級王者を勝ち取った試合(※RIZIN LANDMARK 7 in Azerbaijan)も、詳しい人の意見を聞くと、前評判としては鈴木選手が圧倒的に不利だったわけです。でも、彼は勝った。 極端な言い方をすれば、10回中1回しか勝てない可能性が高い試合で、鈴木選手はその10分の1を試合当日に持ってきたわけなんですよね。 だから、現時点で鈴木選手がケラモフ選手より強いのかといえば、それはわからないわけで、「あの日、あの場所、あの瞬間、鈴木千裕の方が強かった」というのが、正しい解釈の仕方だと思います。