格闘技イベント「RIZIN」の試合はどう決まる? マッチメイク担当者を直撃
選手のストーリーを見せる RIZINが格闘家に求めるプロ意識
──アメリカでもプロモーターとして活動されていたんですね。現在の活躍にも納得です! 先ほどのお話の続きになりますが、RIZINのマッチメイクでは、具体的に何を重視しているのでしょうか? 柏木信吾 榊原CEOとしては、ファンの方々が求めているものを、その時に旬な状態で提供する方針です。だから、具体的にこれというのはあまりないんですけど、あえて言えば、華があって、キャラクターとして魅力的で、強さもある選手……でしょうか。 重視する要素は本当にいろいろあるんですけど、格闘技の魅力や面白さを伝えるという意味では、“プロ意識”を持っているかどうかは重要になると思います。 ──プロ意識というと具体的には? 柏木信吾 たとえば「つまらない試合でも勝てばいい」というメンタリティの選手は、一緒に仕事をしづらいのかなと。勝利至上主義を否定するわけじゃないですけど、競技であってエンターテインメントでもあるので、ファンに「見たい!」と思わせる選手がRIZINには適していると思います。 もちろん、そういった選手だけじゃなくて、世界に対してアピールできる強さを持った選手も必要になってきます。大会ごとに様々な要素を考慮して最適なマッチメイクを考えているので、一概にお答えするのが難しいんですよね。 ──それこそ、選手同士の試合に至るまでの関係性やストーリーなど、“文脈”も重要に感じています。 柏木信吾 そうですね。RIZINの魅力の一つは、そういった選手個々や選手同士のストーリーを、しっかりと繋げて見せていくことだと思います。 あらかじめ物語がつくられているわけじゃない、本当に自然発生型のリアルなヒューマンドラマをどうやって紡いでいくか。試合前後の人間関係だったり、選手の印象的な発言だったり。それらを盛り込んでストーリーを形づくっていく──すごくユニークな手法ではありますね。 ──選手同士の背景を踏まえるとなると、マッチメイクもぎりぎりまで調整が必要そうですね。大会開催のどれくらい前から準備するんでしょうか? 柏木信吾 選手としても、我々のオペレーションとしても、理想を言えば、大会の3ヶ月ぐらい前には全部決めておきたいです。 でも、先ほども言ったように、一つの勝負、一つの試合の結果次第で、次の大会に向けたストーリーや方向性が決まったり、それによって次の大会にも連続して参戦させたり、ある意味リスキーなマッチメイクをする場合もあります。 たとえば、大晦日まで6週間を切ってますけど(※取材は11月21日に実施)、11月17日に行われた「RIZIN LANDMARK 10 in NAGOYA」に出た選手が、大会の結果を受けて大晦日にも出場するというストーリーも考えられます。 当然、早く決まるのが理想なんですけど、ぎりぎりまで粘って、より最高の大会をつくっていきたいんですよね。 ただし、外国人選手はビザ取得の時間の兼ね合いでそういった対応は難しい。なので、事前にある程度ストーリーとしての大枠を決めておいて、遅くても2ヶ月~1ヶ月半ぐらい前には試合を決定するっていう流れになっています。 ──実際、RIZINデビュー戦に続き、名古屋大会でも勝利した18歳の秋元強真選手に対しては、「大晦日大会にも出てほしい」と思うファンも多いですよね。マッチメイクが一筋縄ではいかないのは納得です。 柏木信吾 スターがつくられていく過程においては、“鉄は熱いうちに打て”じゃないですけど、最適な時期に試合をすることが重要だと思います。 たとえば、2023年に最も輝いたであろう鈴木千裕選手(※RIZINフェザー級王者)は、彼自身が畳みかけるように試合をしたことで、短期間でストーリーがつくられた結果、鈴木千裕というブランディングが確立できたのかなと。マッチメイクにはそういった視点も必要なんだと思います。