インドとパキスタンに「州」設立 ISは紛争地に必ず現れる
紛争地で憎悪が渦巻く場所に入り込む過激派組織
ISほかのイスラム過激派組織が、これまでにテロの標的にしてきたのは下記に挙げたような国や地域が中心になっています。最近では、これらとは全く関係のない無垢の人たちがソフトターゲットとして狙われ、命を落とすケースが増えています。 (1)内戦や紛争が存在し、治安が悪く、多くの過激派組織・テロ組織が跋扈(ばっこ)している無法地域 (2)比較的イスラム人口が多く、その他の宗教との間で紛争が発生している地域 (3)イスラム教徒が他の宗教に迫害され、イスラム教徒が常に殺害の恐怖に怯えているような地域 (4)その土地に住むイスラム教徒が貧しい暮らしを強いられており、社会の上層部にはい上がるチャンスが奪われていると感じられるような地域 (5)国の政策として、古来のイスラムの風習、衣服、風体、作法などに制限を課しているような地域 これらを見ると、いまシリア・イラクの拠点を失ったISが新たに拠点を築き上げようとしている地域は、本質的には治安が悪く、宗教間のいさかいが存在し、テロリストに安全な潜伏場所を用意できるような地域ということになり、上に掲げたテロが発生しやすく憎悪が渦巻いている地域とほぼ同じであることに気付きます。 それもそのはずで、そもそもテロの標的とテロリストの居所は、テロ組織にとっては距離があるのは望ましくありません。テロを未然に防ぐのであれば、このような条件がある場所や地域を徹底的に調べ上げ、次の対策に生かしていくべきだと思います。
----------------------------------------------- ■安部川元伸(あべかわ・もとのぶ) 神奈川県出身。1975年上智大学卒業後、76年に公安調査庁に入庁。本庁勤務時代は、主に国際渉外業務と国際テロを担当し、9.11米国同時多発テロ、北海道洞爺湖サミットの情報収集・分析業務で陣頭指揮を執った。07年から国際調査企画官、公安調査管理官、調査第二部第二課長、東北公安調査局長を歴任し、13年3月定年退職。16年から日本大学教授。著書「国際テロリズム101問」(立花書房)、同改訂、同第二版、「国際テロリズムハンドブック」(立花書房)、「国際テロリズム その戦術と実態から抑止まで」(原書房)