20匹以上の保護猫と暮らした愛猫家町田康さんが選ぶ“猫の手触り”を感じる音楽3曲「私にとって猫は憧れ」
世の中に溢れている猫をテーマにした音楽。作家の町田康さんに忘れられない3曲を選んでいただきました。(「CREA」2024年夏号より一部抜粋) 【画像】「頭に染みこんで未だに消えない」町田康さんが選ぶ3曲
猫の手触りを感じる楽曲の数
世の中に溢れている、猫をテーマにした楽曲。気まぐれな恋人を猫に喩えたり、猫の凜とした振る舞いに、自由に生きたいと願いを込めたり。猫が好きな人もそうでない人も、「猫と音楽」で思い浮かぶ曲や歌詞があるだろう。曲のなかの実体のない猫の存在感が、その音楽を聴く人の心にしっかりと爪痕を残すさまは、これもまた捉えどころのない猫の魅力の一つなのかもしれない。 作家の町田 康さんは、猫と音楽作品の魅力の一端をこう言い表した。 「猫を歌詞に出すのは難しいと考えます。なぜならどのような言葉も実際の猫は通り過ぎてスタスタ行ってしまうからです。 しかし曲となると猫を、猫の手触りを感じる曲はあります。ネコ、という言葉を其の儘、使っていない方が響くと思います」 町田さんはこれまで20匹以上の保護猫と生活をともにした愛猫家で、猫との日々を4冊のエッセイにまとめている。 猫と暮らす魅力を著書『猫にかまけて』のなかで「どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた」と記した町田さん。町田さんにとって忘れられない「猫と音楽」を伺った。
●「黒ネコのタンゴ」皆川おさむ/フィリップス
「昭和四十五年、爆発的にヒットして毎日のようにテレビから流れて頭に染みこんで未だに消えない」――町田さん 1969年10月発売、ひばり児童合唱団に所属していた6歳の皆川おさむのデビュー曲。原曲はイタリアの童謡「Volevo un gatto nero(黒猫が欲しかった)」。 シングル盤が発売されるとオリコンで14週連続1位、70年のレコード年間売上で1位と大ヒットを記録した。 これをきっかけに70年には「子ども歌手」が流行するなど、社会現象を巻き起こした国民的童謡。 「黒ネコのタンゴ」 作詞・作曲 PAGANO FRANCESCO 作詞 MARESCA FRANCESCO SAVERIO SORICILLO ARMANDO 訳詞 見尾田みずほ だけどときどき 爪を出して ぼくの心を悩ませる 夜のあかりが みんな消えても 君の瞳は銀の星よ キラキラ光る 黒ネコの目 夜はいつも 君のものさ