高まる巨大地震のリスクの裏で進む「防災道の駅」開発、意外すぎる4つの事例とは?
能登地震でも活躍、さまざまな用途
これらの高付加価値コンテナの可動性のメリットを活かした、道の駅における平常時・災害時それぞれの活用用途として、同ガイドラインには主に次のような例が示されています。 幅広い用途に活用でき、移動が簡単で機動的に設置可能な高付加価値コンテナ。特に災害時においては、被災地へ移設しての災害支援機能の提供を図る事例が増えています。 2024 年1月1日に、能登半島を中心とする北陸地方を襲った能登半島地震。マグニチュード 7.6、最大震度7(石川県志賀町、輪島市)の大地震による死者・負傷者などの人的被害は1545人、住宅被害は約11万4000棟に上りました(2024年4月2日時点)。 この地震により、能登半島全域で電気・ガス・水道等のライフラインが機能停止し、発災直後の1月2日には約4万人もの住民が避難生活を余儀なくされました。 その避難生活や復旧支援のため、被災地周辺の避難場所などには合計44 件のコンテナが派遣されました(2024年2月14日時点)。そのコンテナの機能の内訳は、トイレ(31)が最大で、以下、医療・診療(6)、仮設住宅(3)、洗濯(2)、入浴、ソーラー発電(各1)となっています。この中には、平常時は他地域の道の駅に設置されているコンテナを移設した例も含まれています。
「道の駅」における高付加価値コンテナの導入事例4つ
このように、比較的低予算で設置でき、平常時だけでなく災害時においても機動的にさまざまな機能を提供することができる高付加価値コンテナは、全国の「道の駅」における活用が期待されています。 その契機となったのは、国土交通省の「新『道の駅』のあり方検討会」が2019年11月18日に公表した提言「『道の駅』 第3ステージ 地方創生・観光を加速する拠点へ」です。 この提言では、道の駅の将来像として広域的な防災拠点を担う役割が期待され、防災機能を強化した「防災道の駅」選定制度を導入すること、2025年までに地域防災計画に位置づけられた道の駅を約500駅選定することなどが盛り込まれました。 この提言を受け、平常時では道の駅のサービス機能向上や、それぞれの道の駅が抱える個別課題の解決、災害時では機動的な災害支援のための有効な手段として、高付加価値コンテナの役割が期待されています。 「『道の駅』における高付加価値コンテナ活用ガイドライン」には、実際に道の駅に高付加価値コンテナを導入・活用している事例が紹介されています。 【導入事例1】道の駅「常総」(茨城県常総市) 同施設では2023年4月28日に開業後、集客が想定以上となり、追加的な人員増強と商品在庫の確保が必要となりました。そこで従業員の休憩室や倉庫が不足し、スペース確保のためにけん引型(トレーラーハウス)のコンテナを導入しました。 【導入事例2】道の駅「うきは」(福岡県うきは市) 駐車場の拡張に伴うトイレの利便性低下を解消するため、コンテナトイレを整備した事例です。「防災道の駅」に選定されていることもあり、災害時の活用を想定し、自己浄化循環・太陽光発電による独立運転が可能なコンテナトイレを導入しました。 先の能登半島地震の際は、道の駅「あなみず」(石川県穴水町)にコンテナを派遣し被災地支援を実施しました。 【導入事例3】道の駅「いちかわ」(千葉県市川市) 無人決済の「コンテナ型スマートストア」として設置。24 時間営業で、スマートフォンのアプリによって入店から商品選択、決済までを利用者自身で完結することができ、さらにAIを活用した需要予測によって廃棄ロス削減・発注作業の効率化を図るものです。災害時にも活用できる高付加価値コンテナとして、2022年2月1日から約1年間、試験的に運営されました。 【導入事例4】道の駅「ようか但馬蔵」(兵庫県養父市) 車でけん引できるコンテナ型移動式ランドリーを、運送会社が運営。通常時はコインランドリーとして「道の駅」やキャンプ場などに設置し、災害時には避難生活支援のために避難所に設置することができます。2023年8月に近畿地方を襲った台風の際は、断水地域へと派遣されました。また、先の能登半島地震の際は、石川県珠洲市の上戸小学校に派遣され被災地支援を実施しました。
上昇する防災コスト…自治体は今後どう対応?
近年、日本国内では地震に加えて大雨や短時間強雨による洪水・土砂災害も増えており、自然災害への備えの重要性がますます高まっています。その中で道の駅に対して広域的な防災拠点としての役割が期待されているのですが、一方で、国・自治体の防災に関する予算が限られているのも事実です。 原材料高に伴い、防災拠点を整備する自治体の負担もいっそう増大している中にあって、比較的低予算かつフレキシブルにさまざまな用途を備えることのできる高付加価値コンテナへの注目が高まっているというわけです。高付加価値コンテナが大規模な公共インフラ工事にかわる選択肢として普及していくのかに注目です。
執筆:堀尾大悟、取材・編集:金融ジャーナリスト 川辺 和将