犯行が行われた浜松市内のドン・キホーテ

一家総出で万引きに手を染める――。映画「万引き家族」を彷彿とさせる事件が実際に起きた。浜松中央警察署は9月15日、同市内のドン・キホーテで商品およそ100点を盗んだとして会社員の36歳の男、無職の54歳の女、無職の67歳の男を現行犯逮捕した。3人は同市内のマンションに同居していて親族とみられているが、なぜ一家総出で犯行に至ったのか。現地におもむき、その背景に迫った。 【マンガ】「一緒にお風呂入ろ」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性の「罪悪感」

「3人は自前の買い物カゴを持参していた」

勤務先に掲示されていた36歳の男の本人写真

逮捕された3人は、9月15日の午前11時30分ごろ、食料品や日用品およそ100点、販売価格あわせて5万円相当の品物を盗んだ疑いがもたれている。この白昼堂々と行われた犯行を、被害店舗の従業員はこう振り返る。 「あの3人組は全員体格がよくて、買い物カゴ2つに大量の食料品を詰めていたのを覚えています。特に多かったのは『一蘭』のカップラーメンをはじめとしたインスタント食品だったり、お肉とかお酒でした。 その日は三連休真っ只中ということもあり、店内は多くのお客さんで賑わっていましたが、逮捕された3人組は明らかに挙動がおかしかった」 店を訪れた3人は、店内の買い物カゴではなく「マイカゴ」と呼ばれる自前のカゴを持参。だが、店では以前から「カゴ抜け」と呼ばれるマイカゴを悪用した万引き行為がたびたび発生していたため、3人は万引きGメンにマークされていたという。 「そしたら案の定、1階のレジを通さずにそのまま駐車場まで出ていったので、Gメンさんが『これ会計してないですよね？』みたいな感じで声をかけて、その後に社員経由で通報する流れになりました。この店では3カ月に1回ほどのペースで万引き犯を捕まえているそうですが、一度にここまで盗まれたのは初めてだと思います」(同上)

恐妻家として知られた18歳上の妻

一家が住んでいるマンションに掲示されていたポスター(住民提供)

事件の報道があった夜にはネット掲示板でも話題になり、「リアル万引き家族じゃん」などのコメントが多数投稿された。彼らが同居する、同市内のファミリー向けマンションの住民はこう語る。 「驚くかもしれないけど、逮捕された36歳の男性と54歳の女性は親子ほども歳が離れていますが夫婦なんです。あの2人は今から1～2年ほど前に結婚して、ここを買って引っ越してきました。 それと奥さんはまだ小さいころに両親に捨てられて叔父さんに引き取られた。だから結婚するときも『一人にしたら可哀想だから』って理由で、その叔父さんにあたる67歳の男性もつれてきて一緒に暮らすようなったそうです」 この54歳の年上妻は「恐妻家」としても知られていた。前出の住民は「奥さんは関西出身でとにかく気が強い感じ。たまに壁越しに『こんなことやってもダメなんよ！』とか『なにしようが！』みたいな怒鳴り声が聞こえてきた」と振り返る。 その一方で、一家の大黒柱でもある36歳の男は同市内の運輸会社に勤務しており、社内では「口下手で気が弱い真面目キャラ」として知られていた。同僚男性は「なんでこんなことしたんだろ……」と肩を落とす。 「彼はふだん日勤で、荷物の仕分けから配達、事務作業なども全てこなしていました。これまで無断欠勤したりトラブルを起こしたとかも聞いたことないし、ただ寡黙に仕事するタイプ。ふだんの様子を見ているかぎりではそんな犯罪をするようには見えませんでした。 彼の口から『金がない』なんて言葉も聞いたことないし、一昨年には『中古のマンションを買ったんだよね』とも話していた。最近も節約してる感じはなく、いつも通り会社で注文する宅配弁当を食べていたので、お金に困ってるイメージは全然なかったです」