まさに“特別”東京23区 都と特別区の「財政調整制度」とは
14日の告示で、新しい都知事の座をめぐり、候補者が駆け巡っている首都東京。その東京だけに存在するのが、23の「特別区」です。一般の市町村と同じ基礎自治体の一つですが、財政面や行政事務では大きく異なり、都と密接な関係を持つ、まさに“特別”な自治体として存在しています。「特別区」は、どのような仕組みで成り立っているのでしょう。
巨大都市圏を支えるため 都と特別区が編み出した役割分担
約1360万人の人口を抱える東京都。都内には62区市町村があります。特に、その中の特別区23区は、住民数約900万人、仕事や学校などで活動するいわゆる昼間人口は1100万人を超える巨大都市圏です。この人口・産業が高度に集積するエリアの行政を、全体として滞りなく行うため、基礎自治体である特別区と、広域自治体である都が、事務を役割分担するという特殊な制度が編み出されました。この仕組みが「特別区制度」と呼ばれるものです。 例えば特別区は、ほかの市町村同様、身近な行政サービスを取り扱うほか、公選の区長、議会、条例制定権、課税権を持っています。その一方で、大都市地域全体を一体として処理する必要がある水道・下水道・大規模な都市計画といったインフラに関することや消防などは、都が担当しています。 しかし、他の基礎自治体と最も大きく違うところは、都との間で財源のやりとりを行う「財政調整制度」が存在するところです。 本来、特別区が市町村だったら徴収できる税がいくつかあります。それが、「固定資産税」「市町村民税法人分」「特別土地保有税」の“3税”はじめ、「都市計画税」「事業所税」などで、それらの税金は都が代わりに徴収します。 そして、集めたそれらの税金のうち“3税”を、都と特別区が役割に応じて配分し、23の特別区の間で、行政水準に不均衡が生じないように調整するのです。 では、実際に、どのように都と特別区で財源を分けているのでしょうか(図)。 2013(平成25)年度決算によると、特別区の代わりに、都が徴収したのは2兆円です。このうち“3税”は、約1兆7000億円でした。そしてこの中から、55%にあたる9000億円を特別区に交付しました。 特別区は、もともと徴収した1兆1000億円と、配分された9000億円を合わせた2兆円で基礎自治体として行う保育や福祉などの行政サービスを行いました。都は財政調整後、残りの1兆1000億円分で、消防など特別区の行政サービスを行いました。