森万里子がデザインした3つの「レディ ディオール」。宇宙に漂う魂が輝くようなバッグの秘密とは?
「ディオール レディ アート」は国内外のアーティストの自由な解釈によって「レディ ディオール」の新たな美を見出すプロジェクト。第8弾となる今回のプロジェクトに参加した森万里子さんに聞きました。宇宙に漂う魂が輝いているようなバッグの秘密は? 【フォトギャラリーを見る】 森万里子が「ディオール レディ アート」のために作ったバッグは3つ。どれも繊細な色彩が印象的だ。ひとつ目はバッグにしっとりと輝くたくさんの珠が描かれている。見る角度によって光や色が動く。 「これは1999年に発表した《ドリーム・テンプル》という作品内の映像を引用したものです。3つのバッグはどれも『阿頼耶識(あらやしき)』のコンセプトでつながっているのですが、私のイマジネーションでは光が中央にあって、そのまわりに魂が浮遊している、その魂がこの珠の一つひとつです」
“阿頼耶識”とは仏教の唯識論でいう、表層意識の一番下にある深層意識のこと。唯識論とは「ただ識のみなり」という意味で、すべては実体のない幻想と解く。この阿頼耶識は前世から来世へ、時を超えてつながっていくものとされる。 「私たちはふだん阿頼耶識、深層意識を意識することはないけれど、そういったものがあるからこそ生命が存在しているという感覚があります」
ふたつ目は水の流れのような光ファイバーのファブリックに包まれたバッグ。大きなリボンがアクセントになっている。このバッグはLEDによって、少しずつ光の色が変わっていく。 「2022年に〈東京都現代美術館〉で『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』展を見たのですが、そのときにリボンが初期から現在まで継承されているデザインであることに気がつきました。そのリボンが女性のフェミニンさ、エレガントでキュートなところをうまく表しているように思えて、ディオールのデザインへのオマージュとしてリボンをモチーフにしました。バッグをボディに見立て、ドレープのドレスのように仕上げました」