「1本140万円」の超高級日本酒も登場…唎酒師が解説「大吟醸でも特別純米でもない」日本酒の新ジャンル
■「1本なんと140万円」2013年物の「黒龍 無二」 ただ、私は日本酒への投資の本命は、株ではなく実物だと思っています。ジャパニーズウイスキーも実物は高値で取引されています。希少性が評価されているわけですが、日本酒でも同じような現象が起きるのではないかと思っています。 問題は、日本酒はウイスキーと製造法が異なることです。ウイスキーは蒸留酒で長期保存が可能ですが、日本酒は醸造酒なので難しい。これまでは、毎年、新酒がつくられて、年度内に飲み切るのが基本でした。 一方で同じ醸造酒であるワインは、年代物のほうが価値は高くなります。実は、日本酒にもワインと同様に長期に熟成させた「熟酒」あるいは「古酒」と呼ばれるものがあります。 ちょうど1年ほど前に、ある高級和食店で忘年会をしたときのことです。メニューで日本酒のラインナップを確認すると「黒龍無二」がありました。福井県の黒龍酒造が醸造した「黒龍」を長期貯蔵した熟酒です。 驚いたのはその価格です。2017年物で4合瓶が52万円、2013年物に至っては同140万円だったのです。さらに2013年、2015年、2016年、2017年の4本セットは同250万円でした。 このメニューを見た時に、日本酒もジャパニーズウイスキーと同様に現物投資の対象となることを確信しました。私は普通の居酒屋にも行きますし、ときには1人10万円の高級和食店に行くこともあります。しかし、高級店ほど満員で予約が取れにくくなっていることを感じます。 ■まるでワインのような「熟酒」という新ジャンル なぜここまで高級和食店が人気になっているのかわかりませんが、首都圏を中心に酒類販売を手掛けるカクヤスの会長にあるとき聞いてみると、「やはり中国人にも人気だけれど、普通の欧米人も来ていて、とにかく価格が高い順に埋まっていく」というのです。1年以上、予約が取れない店も多くなっているといいます。 私自身、唎酒師(ききざけし)の資格を持ち、日本酒検定1級の日本酒名人を取得するほど日本酒好きですが、日本酒好きは「熟酒がいい」と言っています。熟酒が日本酒の新たなジャンルになるのは間違いないでしょう。 唎酒師のテイスティングで最も重要な判定の一つに「劣化臭」があります。劣化臭には日光で劣化した場合の「日光臭」と熱で劣化した場合の「老香(ひねか)」があります。どちらの劣化臭なのかを見極めるのが非常に難しいものです。熟酒の匂いも劣化臭に似ているところがあります。 つまり、熟成させた日本酒の味わいと劣化した日本酒の味わいは紙一重の違いなのです。その意味ではワインも同じです。熟成させた年代物のワインを飲んでカビ臭いと感じることがあります。熟酒の味わいもそれに似たものがあります。