【毎日書評】「モヤモヤした気持ち」はなぜ生まれるか? いつもモヤモヤしがちな人の思考のしくみ
「認められたいのに認められない」とか、「成功したいのにうまくいかない」とか。願いが叶わずモヤモヤした思いにとらわれてしまうことは、生きていれば避けられないことでもあるでしょう。 それは、モヤモヤのへの対処の仕方が間違っているからだと指摘するのは、『モヤモヤしない考え方』(田中よしこ 著、ワニブックス)の著者。モヤモヤの“扱い方”が間違っているから感情がうまくおさまらず、心が整えられていないからモヤモヤが一向になくならないということのようです。 しかし、「本当の自分」を取り戻すだけで、誰でも簡単にモヤモヤを解消できるのだとか。具体的には、2500年ものあいだ使われてきたブッダ(ゴータマ・シッダールタ)の教えに込められた悩み解決法の“神髄”──「非我(ひが)」と「無明(むみょう)」を実践するだけで、すべてがうまくいくというのです。 【非我】「すべてのものは自分のものではない」[と知ること] 【無明】「苦しみの原因について知らない(または、知ろうともしない)」[のをやめること] (「はじめに」より) これらは決して難しいことではなく、それどころか多くの方が知らず知らずのうちに実践しているようです。端的にいえば“心”の正体を知り、自分の心をより理想的な方向へとうまく導いて“その人にとっての究極の幸福”に達するための教えだということ。 著者自身も、「非我」と「無明」の教えによってさまざまな苦難を乗り越えてきたそう。つまりはそうした自身の経験、また「マインドトレーナー」として積み上げてきた実績をもとに本書は書かれているわけです。 きょうはそんな本書のなかから、第3章「二度とモヤモヤしなくなる方法」に注目してみたいと思います。
「自分の納得できない感情」の見つけ方
そもそも、他人あるいは自分自身に期待したり、執着を抱えたりしているだけで、人は生きづらくなるものです。いいかえれば、「どうにもならないこと」をどうにかしようとしても無理だということ。また、「わかっていても行動までは変えられない」ことは、モヤモヤした感情に悩んでいる人が陥っている代表的なジレンマであるようです。 では、どうすればいいのでしょうか? そんなときは、自分が考えている内容をことばで説明していくと、深層心理までも整理できてスッキリすると著者は述べています。 よくわからない状態(納得できない感情)を言葉にするだけで、実は大事な情報をスルーしているのがわかります。自分が目にした情報や、その時に出てきた感情はすべて本心にアプローチできる重要な情報ということです。(179ページより) 自分のなかにある「納得できない感情」(=モヤモヤ)を言語化して確認していくと、自己理解を進めることができるそう。たとえば客観的に自分を俯瞰できるようになったり、生きづらさの思考パターンがわかったり、執着しているものが見えてきたり、改善したい部分がわかったりするということです。 そうやって自分にとっての「重要情報」を発見できたら、自分が自分のいちばんの理解者になり、どんどん自分を肯定できるようになるはず。そのため、おのずとスッキリした自分で生きていけるようになるということです。 仮にそれがうまくいかないとしたら、モヤモヤとの関わり方がよくないのかもしれません。つらい状況から一刻も早く抜け出したいあまりに、その場しのぎの視点で動いていた可能性があるからです。 モヤモヤと向き合うための目的が、「モヤモヤの原因を取りたい」ではなく、「早くラクになりたい」になってしまい、その場を乗り切ることだけにフォーカスしすぎていたということです。 「この場さえ乗り切ればいい」という気持ちで過ごすと、重要な情報は見落とされ、スルーされた感情が自分のなかに蓄積されてしまうわけです。(178ページより)