北海道寿都町&神恵内村「核のゴミ処分場」候補地で「90億円の交付金」と「放射能のリスク」の間で揺れる住民たち
視察ツアーに参加したことのある女性は、「六ヶ所村と幌延、どちらも行きましたが、幌延ではトナカイ牧場や宗谷岬に連れていってくれて、思い出深い旅行となりました。地層処分の安全性も理解できましたよ」とうれしそうに話す。 反対派住民は「おばさんが旅行気分で行って、『処分場は安全』と吹き込まれて帰ってくるだけ」と冷めた目で見るが、これまで延べ人数で約200人の町民が参加した。その中には「視察ツアーを通じて考え方が変わった」と反対派から賛成派に転換した住民も少なくないという。 記者は寿都町に滞在した2日目の夜、町内の居酒屋に入った。そこに偶然居合わせたのが、NUMO寿都交流センターの職員だった。彼は記者の隣のカウンター席に座るなり、「週プレの記者さんですよね」と言った。 初対面のはずなのに、なぜ知っているのだろうと狼狽していると、それを見透かしたように彼はこう言った。 「今日のお昼休み、センターの近くのお花屋さんのところに遊びに行ってたんです。そこに、『プレイボーイです』と入ってきたのが記者さんだった。私は口を出さず、隅っこに隠れていましたが(笑)」 最初は困惑したが、その接しやすさにやがて話も弾む。 「われわれは、地元の人たちを洗脳して、最終処分場建設まで突っ込むつもりはありません。寿都や神恵内で地道な活動を重ねていますが、今後、断られるかもしれない、という想定もあります。私たちとしては、この町で出会った人を大切にしながら伝えるべきことは伝えて、誠実に向き合う、ただそれだけのことです」 彼と関係が深い元町議によると、この職員は「以前は福島第一原発事故の賠償業務を担当していた東電の社員で、当時、会社に盾突きながらも被災者救済に全力を注いだバリバリの人」だという。 ■神恵内村の本音? 寿都町での取材を終えると、そのまま車で神恵内村に向かった。寿都-神恵内は海岸沿いを走る国道一本でつながり、1時間程度で到着できる。 北海道電力の泊原発が立地する泊村を背に国道のトンネルを抜けると神恵内村に入る。 そのトンネルの出口から5~6㎞先までのごく一部が文献調査の報告書案で処分場の「適地」とされたエリアだが、その東側は急峻な山、日本海が広がる西側はほぼ垂直の岸壁という地形で、車を走らせながら「こんな場所に、本当に巨大な地下処分施設を造れるのだろうか?」と感じた。