貿易戦争の恐怖に持ちこたえたか「日銀短観」5つのポイント
(4)貸出態度判断DIは悪化せず
日銀の金融緩和が長期化する下で金融機関収益が圧迫され、金融仲介機能が損傷するという「副作用」が懸念されていますが、このような副作用を測るには、貸し手である金融機関にヒアリングするよりも、借り手である事業会社側の回答で判断するのが有益でしょう。そこで貸出態度判断DI(全規模全産業)に目を向けると、水準は+24となお緩和的な状況にあり、このことは利鞘縮小に直面しても金融機関が貸出審査基準を厳格化させていないことを意味しています。企業の資金調達は依然として余裕があり、副作用が実体経済に伝播している様子は窺えません。
(5)想定レートの変更に「含意」なし
過去の当レポートでも触れたとおり日銀短観では「想定為替レート」が注目を浴びますが、筆者はそこに大きな意味があるとは思っていません。実勢レートとの乖離が業績予想の修正に関係することは事実ですが、 短観で示される想定レートは単に実勢レートを後追いしたものに過ぎないことから、そこに「予想」と いう未来に対する含意はないと思われます。この乖離が大きい時などは、しばしば「企業は想定外の円高に直面している」、「楽観的に円安を見込んでいる」といった説明が散見されますが、それが本当の意味での“驚き”や“楽観“を意味しているとは考えにくいです。
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