東海道新幹線60周年。品川駅の「特大パネル絵」で振り返る、新幹線の忘れられないエピソード
◆あなたと新幹線と60年
2024年10月1日で、東海道新幹線は開業60周年を迎える。その記念事業の一環として、JR東海は絵本作家の鈴木のりたけ氏にイラスト制作を依頼し、品川駅構内に特大パネルとして展示中だ。 【画像】JR東海での勤務経験があるという、大ヒット絵本『大ピンチずかん』の作家・鈴木のりたけ氏 「あなたと新幹線と60年」と題して新幹線の旅における象徴的なシーンが描かれた絵を見ながら、改めて東海道新幹線の魅力や思い出を振り返ってみた。なお、このパネルのイラストはポスターとなって各駅に掲出される予定である。 「あなたと新幹線と60年」と題されたイラストは、60という大きなフレームを中心にさまざまな旅のシーンを描き出している。60周年といっても、車両の変遷は描かず、あくまで車内の様子が中心となっている。60年で何と70億人が利用した新幹線。老若男女、実に多種多様な人々が客となったが、人生の節目節目で乗った人も多い。
◆青春時代の希望とともに
その1つが、絵の中央下の若い女性である。彼女は、一心不乱に英単語カードに目を通している。マフラーをしているから、季節は冬。受験のために東海道新幹線に乗車したようだ。 筆者も郷里の名古屋から1人新幹線で上京したことを思い出す。大学の同級生の中には関西からやってきた者もいて、誰もが新幹線のお世話になっている。ちなみに、イラストに描かれた英単語はappreciate(感謝する)。東海道新幹線に対する感謝とも受け取れ、象徴的だ。 受験だけではなく、芸能界などで一旗揚げようと東京を目指した若者もいただろう。パネル絵の右上のギターケースを持った若者が、それを表している。新幹線は、若者たちにとっては、未来への希望を運んできたともいえる。
◆シンデレラ・エクスプレス~愛と別れとともに
青春の日々、さまざまな出会いと別れがあった。学校や仕事の都合で離れ離れになったカップルもいたが、そうした2人の仲を取り持ったのも新幹線だ。 バブル期に流行したシンデレラ・エクスプレス。週末の一時を仲良く過ごしたものの、別れの時はやってくる。ホームで1人新幹線に乗り込みプレゼントを抱えた女性は、雪景色の車窓を目にしながら旅路を急ぐ。クリスマス・エクスプレスという言葉が流行したのは1990年頃だった。 そういえば、筆者も名古屋から上京した女性を東京駅の新幹線ホームまで迎えに行ったことがあったなあ。いつの間にか疎遠になってしまったけれど、別れがあれば出会いもあるわけで、そうした過去の古傷があればこそ、今の妻との出会いもあったのだ。 筆者にとっても東海道新幹線とともにあった60年間のさまざまなエピソードが通り過ぎていく。まさに、中島みゆきの歌のように、「別れと出会いをくり返し、時代は回る」のだ。