阪神・近本光司、お目覚め球宴選出御礼タイムリー 岡田彰布監督のささやき効果で18打席ぶり安打
(セ・リーグ、広島0-3阪神=延長十回、11回戦、5勝5敗1分、2日、マツダ)待ってたで!! 阪神は首位広島に3―0で勝ち、連敗を2で止めて3位に浮上した。延長十回に近本光司外野手(29)が、18打席ぶりの安打で貴重な2点目をたたき出した。この日発表された「マイナビオールスターゲーム2024」の外野手部門で、ルーキーイヤーから5度連続で選出されたリードオフマン。負ければ借金生活の危機で久しぶりに響かせた快音が虎の7月反攻の号砲だ。 広島の夜空に確かな光が見えた。近本の打球がべたべたした梅雨の空気を切り裂き、左翼手の頭上を越える。指揮官にも背中を押され、誰もが待ち望んだHランプをようやくともした。 「狙いとかないので、ヒット打つだけなので。ヒットになって良かったです」 相手の失策が絡んで1点を先制した延長十回。1死二塁で島内の直球を捉えた。外角のボールに逆らわず、左翼に運んで2点目を加える適時二塁打。6月25日の中日戦(倉敷)以来、18打席ぶりの安打で勝利をグッとたぐり寄せた。 快打の兆しはその前の打席にあった。八回無死一、二塁の絶好機で打席へ。守備のタイムが取られる中、打席内でルーティンを始める近本がベンチまで走って戻った。呼び声の主は岡田監督だ。直接声を掛ける珍しいワンシーン。2人の表情は柔らかかった。 「ゲッツーなってもええから、バントないから、打て」 指揮官からの言葉に「ありがとうございます。頑張ります」と応じて打席に入ると、鋭い当たりを中堅に飛ばす。結果は中飛ながら二走を三塁に進めた。「プレッシャーにもなりますけど、監督の一言はすごく大きい」。そして不振のまっただ中でも信頼とともに託された〝打て〟の指示に次打席で応えた。ようやくトンネルを抜け出した斬り込み隊長に、岡田監督は「その前にやっといい感じで打っとったからな」とうなずいた。 6月は打率・157(83打数13安打)と苦しみ、2試合スタメンを外れて欠場。三回は三遊間への当たりを放つも好守に阻まれるなど紙一重が続いたが、勝負どころで呪縛を解き放った。 指揮官だけじゃない。応えたい多くの〝声〟があった。この日最終結果が発表された「マイナビオールスターゲーム2024」のファン投票で、阪神の野手で唯一選出された。コロナ禍で開催中止の2020年を除いてルーキーイヤーから5回連続の選出。阪神で5回連続の選出は、1954-58年の吉田義男以来、66年ぶり2人目。負傷で出られなかった昨季の分も元気な姿を見せる。その一歩目になった。