無謀か奇跡か。大阪女子マラ転倒途中棄権も“レジェンド”福士加代子は3月名古屋に東京五輪へ最後の勝負賭ける?!
思い出が詰まった浪速路でまさかのアクシデントだ。史上最多5大会連続の五輪出場を目指す福士加代子(36、ワコール)は27日、2020年東京五輪の代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」(9月15日)への出場権をかけた「第38回大阪国際女子マラソン」に出場。12キロ過ぎに転倒、起き上がってレースに戻ったが、最終的に35キロ過ぎで棄権した。MGC出場権を逃した福士の東京五輪出場はほぼ絶望的な状況だが、精密検査の結果、異常が認められなければ、MGC出場権のかかったラストレースである3月10日の名古屋ウィメンズマラソンへの出場を狙うという。福士は奇跡を起こし4大会連続となる東京五輪出場へ望みをつなげることができるのか。
転倒後一度はレース復帰も監督ストップに無念棄権
軽やかな走りで先頭集団につけていた福士の姿が突然視界から消えた。12キロ過ぎだ。左やや前方を走っていた選手と接触し、前のめりに転倒。顔面をアスファルトに強打した。信じられないシーン。すぐに立ち上がると帽子をかぶり直し、集団を追いかけたが、次の瞬間に想像以上の惨状があらわになる。 何と、サングラスに隠れた右のこめかみあたりから血が流れ、両膝の皮がめくれ上がっているではないか。 福士にとって、今大会は14位に甘んじた2016年リオデジャネイロ五輪以来のフルマラソン。2020年東京五輪の代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」への出場権と自身の復権をかけた戦いでしっかりと答えを出すつもりだった。 仕上がりも悪くなかった。レース前には「これまでやってきたことに手応えがある。勝ってMGCを取りたい」と豪語していたほど。その心意気を示すかのように想定外のハプニングにもめげず、何事もなかったかのように再び先頭集団に加わった。 「大丈夫か」 15キロ付近では所属先のワコール永山忠幸監督が沿道まですぐさま駆けつけ、フォームを確認するとともに福士の意思を確認した。しばらくはスムーズに走っていたものの、やはり転倒した影響は小さくなかった。2年半ぶりの実戦も相まって、次第に発汗が激しくなった。ときおり、口を開け、表情もゆがみはじめた。 25キロ過ぎ、とうとう失速し、先頭集団から遅れ始めた。その後は両手に持ったスペシャルドリンクを交互に飲み、態勢を立て直そうとしたが、泥臭さが売りの福士でもそこまでが限界だった。31キロ地点で足を止め、屈伸運動。レースを再開したが、1キロほど走ると、また屈伸運動を繰り返し、ついに34キロでは歩き始め、その間に後続にどんどん抜かれていった。 沿道のファンは声援を送る一方で今後のことを気遣い、棄権を勧める声もあった。福士も「35キロまでは行く。悔しい。ごめんなさい」と口を動かすのが精いっぱい。 とうとう35・5キロ地点で永山監督が止めに入り、自身初となる途中リタイアを受け入れた。 今回が10度目のマラソンとなる福士。なかでも、ここ大阪は、その半分の5度のマラソンを走っているホームコースだ。思えば初マラソンとなった2008年は後半に失速し、4度転倒の末19位でのフィニッシュとなったが、マラソン初優勝も13年の大阪、リオデジャネイロ五輪代表選考のかかった16年には2度目の優勝を飾り、津軽弁で「リオ、決定だべ!」とやって、笑いを誘ったものだった。 そんな“マイコース”で起こった予期せぬアクシデント。 一体、12キロすぎの接触事故はなぜ起こったのか。 陸上関係者の1人は「あのとき、先頭集団は10人もいないほど。密集していたわけでもない中での転倒は非常に珍しい。ランナーは互いの距離感を確認しながら走るものですが、一瞬集中力を欠いたんでしょう。いい感じで滑り出したので気が緩んだのかも。それがレース間隔が開いて実戦のカンが鈍っていたせいなのか。もったいないレースでした」と話した。