奥平大兼×久間田琳加×藤吉夏鈴×月島琉衣×齋藤潤 “観たくてたまらない”若手俳優たち
2024年の映画・テレビドラマを振り返って印象に残った俳優を挙げていくとなると、若手俳優に絞ったところでも、さすがに5人以内に絞り切るのは難しい。実際のところ、頭ひとつ抜けた存在として『墜落JKと廃人教師 Lesson2』(MBS)がシーズン1に続いて抜群だった髙石あかりをピックアップしようと考えていたが、少し前に2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』のヒロインに決まったとなれば、もうあえてこういうところで取り上げる必要もないだろう。 【写真】大ブレイクの下地は完全に出来上がった齋藤潤 その髙石を含め、数年にひとりは“出ているだけで観たくてたまらない”と思えるだけの若手俳優が登場するものだが、それは割と直感的なもの。その俳優を最初に観た作品でそう感じることが多く、もちろんほとんどの俳優は作品を重ねていくごとに経験を積んで表現の幅が広がっていくのだが、そうすると安定感のほうが優ってしまい、“観たくてたまらない”というワクワク感はどうしたって薄れてしまいがちである。
奥平大兼
ところが9月に公開された黒沢清の映画『Cloud クラウド』に出演した奥平大兼に関しては、それこそデビュー作の『MOTHER マザー』から『ネメシス』(日本テレビ系)や『君は放課後インソムニア』など、もう何本も出演作を観てきた俳優ではあるが、完全に別格。同作の後に過去の出演作を何本かあらためて観返してみたのだが、それぞれ初見時の印象さえも遡及して塗り替えてしまうほど、『Cloud クラウド』での彼の演技は強烈の一言に尽きる。 菅田将暉が演じた転売者の主人公が、郊外に引っ越して事業を拡大しようと計画。そこで奥平が演じる地元の青年・佐野を雇うのである。黒沢清作品らしく、多くは語られない作品であり、謎めいた登場人物たちのなかでひときわミステリアスなこの役柄。飄々とした雰囲気がありつつもどこか危なっかしく、そしてこの上なく“何を考えているのかわからない”不気味さがある。黒沢作品初参加でありながら、あの独特の世界観とこれほどまでにマッチするとは。年明けには日曜劇場の『御上先生』(TBS系)にも出演する奥平。近い将来、また黒沢清とタッグを組んでくれることを期待したい。