損保ジャパン、東京海上…AIで進化する「保険業務」
オフィス・工場の構造、施設内の設備や機器、業種、業務内容などリスクは多岐にわたり、引受業務は膨大なデータを読み込んで判断しなければならない。同社はこの作業に際して、データ統合・分析システム「ファウンドリー」を導入、23年から引受申請機能が稼働した。 担当社員が引き受けできると思われる案件をファウンドリーが自動判断、本社商品部に申請するまでの業務を行う。企業向け火災保険は一定規模の企業が対象で、引き受けが適切かどうかの判断には1件当たり約2カ月かかっていたが、自動判断では2~3時間程度で可否が出る。
あいおいニッセイ同和損保では昨年、AIを活用した保険金請求の不正検知システムを開発。自動車修理費の不正請求撲滅に乗り出している。過去の保険金請求見積書や事故データ約420万件を登録し、AIに学習させる。約200の事故車両データを組み合わせて、さまざまな請求パターンを作成させる一方、過去の不正請求疑義データを基に不正疑義モデルを作った。 これを土台に修理工場ごとの請求傾向を分析、不正疑義をスコアリングする。不正の傾向が高いほど高得点になる。人の力だけでは気づきにくい不正請求のパターンの検知が可能になるという。
■水災検知ソリューションとして活用 東京海上日動は、大規模水害時における保険金の迅速対応で、AI活用を図っている。 水害が発生した際は被害が広範囲に及ぶため、立会調査をして支払い判断をするにも時間がかかる。 そこで同社は18年からAIを活用した人工衛星画像を解析することで早期の保険金支払いにつなげる業界初の取り組みを始めた。人工衛星データを組み合わせて、過去の災害における保険金支払い実績を学習したAIが水災範囲や浸水高を解析。水災検知ソリューションとして活用を開始した。
被災状況を30キロメートル×100キロメートル程度の大きな面で捉えられる衛星画像をベースに、SNSなどに投稿された現地の水災画像や河川流域のデータなどを組み合わせて浸水高を解析できる。浸水のエリアと深さを視覚的に捉えることができ、被害を定量的に把握できる被害棟数予測も可能だ。解析には24時間以内に速報版、48時間をメドに確報版が提供できる。 世界最大のSAR衛星(光学衛星と異なり、夜間や曇天でも撮影可能)の撮影態勢を持つフィンランドの会社と協業。日本全域をカバーし35基の衛星を使って1日6回程度撮影できる態勢を敷く。
福田 三郎 :ライター