「取引先の社長の妻と不倫…」意外と多い、同僚の悪いウワサを流す「職場を腐らせる人たち」
根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。 【写真】知ったら全員驚愕…職場をダメにする人の「ヤバい実態」
邪魔者を蹴落とすための怪文書
「陰で足を引っ張る人」は、自分にとって邪魔な相手を蹴落とすためなら手段を選ばない。事実無根のネガティブ情報を流すのに、もっと手の込んだ方法を用いることも珍しくない。 たとえば、大学の医学部の教授選が行われる前には候補者の悪行を暴露する怪文書が頻繁に飛び交う。だいたい金か異性にまつわる悪い噂で、どこまで本当なのか、わからない。それでも、その怪文書のせいで大本命と目されていた医師が落選して、別の医師が教授に就任することもあるので、やはり効果があるのだろう。 怪文書が、知事や市長、議員などの選挙の前に出回ることもあるし、出馬予定の候補者の悪行が週刊誌で報じられることもある。そういうネガティブ情報のせいで立候補を断念したり、落選したりすることは実際にあるようだ。だからこそ、選挙の前になると対立候補のスキャンダルを血眼になって探し、なければでっち上げてでも悪い噂を流すのかもしれない。 似たような話はどこでも耳にする。たとえば、広告会社に勤務する30代の男性会社員は、プロジェクトリーダーに抜擢されかけたが、上司から突然「残念だが、その話はなくなった」と告げられた。信じられなくて、理由を執拗に問いただしたところ、「君が取引先の社長の妻と不倫していて、それに気づいた社長が君に慰謝料を請求し、当社との取引を中止しようとしているというファックスが届いたんだ。大切なお得意様だから、君を抜擢するわけにはいかない」という答えが返ってきた。 まったく身に覚えのないことだったので、この男性は「不倫なんかしていません」と釈明しようとした。だが、上司は「火のないところに煙は立たないからね。お得意様との間になるべく波風を立てたくないという当社の方針は、君もわかっているはずだ」と取り合ってくれなかった。しばらくして、彼の同期の男性がプロジェクトリーダーに抜擢されたので、この同期がファックスを会社に送ったのではないかと疑っているという。しかし、その証拠はない。第一、ファックスの発信元を特定できない以上、何もできない。 ファックスで送りつけられた文書のせいでチャンスを逃したという話は、元女性アナウンサーからも聞いた。以前勤めていたテレビ局で情報番組の司会の話がきて喜んでいたのだが、その話がつぶれたので、上司に理由を尋ねた。すると、彼女の不倫を告発するファックスがテレビ局に送られてきたことが判明した。身に覚えがなかった彼女は、釈明しようとした。 しかし、上司からは「たとえ真偽不明でも不倫の噂が流れたアナウンサーを使うことをスポンサーは嫌がる。上層部はスポンサーが離れることを何よりも恐れているので、仕方ない」という答えが返ってきた。 その後、先輩の女性アナウンサーが司会の座を射止めたので、ファックスを送ったのはこの先輩ではないかと疑わずにはいられなかったという。テレビ局を退職した今でも、この疑惑を払拭できないが、証拠がない以上、どうすることもできない。 二人とも、事実無根のネガティブ情報を流され、結果的に大きなチャンスを逃す羽目になった。それだけ、邪魔者を排除するために送りつけられた文書に破壊力があったのだろう。コンビニから送信すれば、誰が送ったのか特定されにくいファックスは、自分が“告発”したことを知られたくない人にとって最適のツールといえる。 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。
片田 珠美(精神科医)