水上恒司「すごくいい時間を過ごせる」 バンクシーの超話題作も見られる注目の展覧会
人生をより豊かにしてくれる…
――本展は、アーバン・アートの展覧会ですが、現代アートは少し難しいと思っているかたもいるようです。ゴッホやモネなどは親しみがあるけど、知らない作家だと難しく感じるのかもしれません。 水上さん ゴッホやモネは超有名だし、教科書に載っているのを見ているから知っていますけど、正直それで本当にゴッホのことを知っているのかはわからないですよね。ゴッホは知っていると言う人々も、じゃあゴッホはどういう技法で何が有名なのか、本当に知っている人は少ないと思う。それぐらい、アートの世界に対して、ちゃんと知ろうとしている人は少ないのではないかと思います。僕もそうです。 でも、知らないことがいけないわけではないですよね。そんな人間だからこその楽しみ方もあります。ふらっと展覧会を見に来て、作品の背景とか気になる人はその先を調べればいいと思います。僕の場合は、調べるというより、いろいろな作品を見ながら、家にある画材を使って自分の作品をこんなふうに描けば近い雰囲気になるかな、と消化しています。人それぞれ、展覧会の感じ方、消化の仕方はあると思います。 ――まずは展覧会を見に来ていただかないと、その世界に触れられないですよね。 水上さん そうですね。見ないと、その先はないので。アートは、生きていくうえでは絶対的に必要なものではないかもしれません。僕が携わっている映画やドラマの世界も、なくても生きていける。衣食住があれば、人間は生きていけますから。でも、無駄とかいわれる娯楽や余興みたいなものを取り入れたほうが、より豊かに生きていける。そのなかのひとつがアートだと思います。だから、別に見なくてもいいんです。でも、興味が少しでも芽生えたら、絶対に見に来た方がいいです。アートは、人生をより豊かにしてくれるもののひとつですから。
アートは大きな刺激物
――俳優業のかたわら創作活動もされていて、数年前には個展も開催されました。いつ、どんなきっかけで、創作をはじめられたのですか? 水上さん 未就学児というか、僕の記憶がない本当に小さいころから絵を描いていました。絵を描くと、ほめられることが多かったので、それが気持ちよくて今日まで描き続けているのかなと思います。 ――アート制作と演じることの相乗効果はありますか? 水上さん あると思います。そもそも演じるという行為は、時間をかけて必要なスキルや技術を身につければ、誰しも到達できるものだと思っています。僕はまだ道半ばですけど、いずれ演じ方はしっかりと身につくはずです。でも、実はその先、演じる人間がどんなふうに生きていきたいのか、あるいは今までどんなふうに生きてきたのか、という部分が芝居のときに透けて見えてくるので、僕はむしろその部分が大事だと思っています。その大事な部分のなかに、アートが大きな刺激物として存在しているので、その相乗効果は間違いなくあります。 ――アートを見て、感じて、蓄積したものが、演じるときに内面からにじみ出てくるという感じでしょうか。 水上さん そうですね。努力だけではどうしようもない部分だと思います。同じMUCA展を見たとしても、人によって感じ方や見方は全然違いますよね。また、単に芸術に触れればいい、という話でもないと思います。