ワリエワのドーピング新事実判明に海外メディアは疑念…「3種類の薬物“カクテル”はロシアの組織的関与を示しているのかも」の専門家意見も
ワシントンポスト紙は、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が、祖父が服用していた薬を飲んだという主張に疑問を呈していることを報じた。 「WADAは、ワリエワが祖父の投薬がトリメタジジンの出所であることを立証するには不十分であり、祖父がトリメタジジンを使用していたことを示す証拠も不十分としている」と伝え、さらに今後の調査でワリエワが失格となり団体戦で獲得した金メダルと、CASにより出場が認められ、確実視されている女子シングルの金メダルも剥奪される可能性を示唆した。 「ワリエワのドーピング事件は現在も継続(調査)中だ。彼女は、すでに団体競技で金メダルを獲得し女子シングルでもメダルを目指している。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)は、この訴訟が解決するまで、団体やシングルでワリエワが上位3位以内に入ってもメダルを授与しないことを発表している。これはIOCがワリエワの失格の可能性を考慮していることを示す稀に見る措置だ」 今回、CASが昨年12月のロシア選手権でドーピング違反が判明したワリエワの五輪の出場継続を認めた背景には、WADAの規定で16歳以下の選手は要保護の対象でありもし資格停止処分を解除しなかった場合、「取り返しのつかないダメージを与える」との配慮があった。 だが、ニューヨークタイムズ紙は、過去に若年選手のドーピング違反事例があったことを紹介している。シドニー五輪に16歳で出場した体操のルーマニア代表、アンドレ―ア・ラドゥカンの事例だ。彼女は女子個人総合で母国の“レジェンド”コマネチ以来となる金メダルを獲得したが、ドーピング検査で禁止薬物「塩酸プソイドエフェドリン」が検出され、金メダルを剥奪された。 「ラドゥカンは、2000年のシドニー五輪で、他の2人のルーマニア人選手とともに女子個人総合の表彰台を独占した。そのときは16歳だった。彼女のストーリーは周囲の大人の言うことを何でも聞く若い選手たちにとって教訓となった。風邪の症状で目が覚めた彼女は、ルーマニアのチームドクターから市販の薬を渡され、何気なしに飲んだ。その薬には禁止薬物が含まれていた」 さらに喜びから一転してメダルをはく奪された当時のラドゥカンの様子をこうだったという。 「彼女は五輪に出場できる年齢にようやく達したティーンエイジャーだったが、ほとんどの演技を完璧にこなした。音楽に合わせフィニッシュした後、彼女は拳を上げてコーチのもとに駆け寄りコーチは彼女を肩に乗せて観客に手を振った。彼女が優勝したことは得点を待つまでもなかった。しかし、その夢は突然に消えてしまった。摂取したことを知らなかった薬物に陽性反応が出たため、彼女は金メダルを剥奪されたのだ」 そして記事は、現在のワリエワが置かれている状況と比較した。 「禁止されている心臓病薬の陽性反応が出たにもかかわらず、北京五輪出場が許可されたワリエワの扱いとは対照的だ」 ラドゥカンには同情できる余地もあったという。 「その物質が彼女のパフォーマンスを向上させたと主張する意見はほとんどなかった。同じ五輪でルーマニアが金メダルを獲得した団体戦と、銀メダルを獲得した種目別では、彼女の検査はクリーンだった。(彼女はこれらのメダルを保持している)。ラドゥカンの個人総合の金メダルの扱いに関しては彼女の年齢や意思は関係ないとされた。裁定では、医師に非があり、ラドゥカンに非がないことも確認されたが、規則は規則であるとしてメダルが剥奪された」と当時の厳格な処分について伝えている。 今回、処分を受けずに五輪への継続出場が認められているワリエワの状況とは対照的だ。 ワリエワに対する極めて異例の措置と、陽性反応に対する弁明や、3種類の薬物が検出された事実など、多くの疑念が渦巻いている。世界が注目する中、メダリストが決まるフィギュアの女子フリーが行われる。