米金融政策「新局面」に 物価上振れ、利下げペース減速へ トランプ次期政権に身構え・FRB〔深層探訪〕
米連邦準備制度理事会(FRB)は18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、3会合連続の利下げを決めた。一方、政策金利見通しでは、来年の利下げ回数は0.25%幅で2回と、従来想定の4回から半減。パウエル議長は金融政策の「新局面」入りを宣言し、利下げペースを緩める方針を明確にした。トランプ次期米大統領の経済政策を巡る不透明感も影を落とす中、好調な経済の維持に努める構えだ。 【ひと目でわかる】米政策金利と消費者物価指数 ◇中立金利視野に 「ここからは新たな局面だ。追加利下げに関しては慎重に行う」。パウエル氏はFOMC後の記者会見で、金融緩和のペースダウンを明言した。こうした発言を受け、市場では「来年は2回利下げが行われると予想するが、より少なくなる方向にリスクはシフトした」(米金融大手)との観測が浮上している。 背景にあるのは、インフレ鈍化の停滞だ。11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%上昇と、伸びは2カ月連続で加速。FOMC参加者の経済見通しでは、来年末のインフレ率は2.5%と、前回9月時点から0.4ポイントも上方修正された。 パウエル氏は「来年の利下げペース減速は今年の高いインフレと、物価予想上振れの両方を反映している」と説明。「インフレ鈍化の進展を確認する必要がある」と述べた。 高金利にもかかわらず強さを保つ景気や、暗号資産(仮想通貨)の高騰を受け、景気を過熱も冷ましもしない「中立」的な金利水準が上がったとの見方も出ている。パウエル氏は9月以降の利下げ幅が計1%に達したことで、「中立水準へ大きく近づいている」と分析。これが「追加利下げに慎重な別の理由」と認めた。 ◇関税の影響議論も 約1カ月後には、トランプ次期政権が始動する。既にトランプ氏はメキシコやカナダに対し、不法移民や合成麻薬の米国への流入を阻止しなければ25%の関税を課すと表明。FRBはこれまで、関税引き上げや減税といったトランプ氏の政策が及ぼす影響について、詳細が不明として静観していたが、そうも言っていられなくなってきた。 パウエル氏は今回の経済見通しで、一部の会合参加者がトランプ氏の政策の経済的な影響を「考慮し始めた」と指摘。さらに「関税がインフレに影響する経路について議論している」と明らかにした。 もちろん「結論を出そうとするのは時期尚早」(パウエル氏)だ。しかし、「経済については非常に楽観的で、来年も良い年になる」(同)との強気な発言とは裏腹に、予見不可能な「トランプ劇場」に身構えつつあると言えそうだ。(ワシントン時事)